2014年/日本/103分
監督 米林宏昌
原作 ジョーン・G・ロビンソン
脚本 丹羽圭子、安藤雅司、米林宏昌
作画監督 安藤雅司
美術監督 種田陽平
音楽 松村崇雄
主題歌 プリシラ・アーン
出演 高月彩良、有村架純、松嶋奈々子、寺島進、根岸季衣、森山良子、吉行和子、黒木瞳
前回の「マレフィセント」の感想の冒頭と同じ文章になりますが、男の出る幕はない!って感じでしたね。同じベクトルの愛を主題(というか大オチ)に取り扱っていて、それに加えていわゆる百合要素を盛り込んできたと。この百合描写、奔放なスキンシップと、がっつりマーニーが主導権を握っていた関係から次第にその役割が変化してゆく様を微妙な表情や仕草、言動で描きつつ杏奈の成長物語へと繋げていくと言う意味合いで非常に活きていたと思います。そちら方面が大好物なぼくも序盤のマーニー攻め、杏奈受けのシークエンスはおいしくいただきました。
ところで、作品全体としての感想なんですけれど、ごめんなさい!いまいちでした!
まず、最初に思ったのが作画っていうのか動画っていうのかアニメーションとしてのクオリティが低くない?という事です。
ぼくは普段、全くアニメを観ないので、どうのこうの言える立場でもないのですが、それでもジブリ作品に限って言えばほとんど観てますし、大好きな作品もたくさんあります。それはやはり本来の意義でのアニメーションの感動っていうのを含んだ面白さなんですよね。
今作はもちろんファンタジーではあるんですが等身大の人間を描いているのでリアリズムを軸に描かざるを得ない。けれども、なんだか妙にその点が引っ掛かって集中力を欠きました。
マーニー自身の造形と背景画の美しさには心惹かれましたけれど、変な話、崖の上のポニョってめちゃくちゃな話だったけれどやっぱりアニメーションとしてはすごかったよな、みたいなことを鑑賞中ずっと思い出していました。
それと、原作小説は未読なのですが、脚本がですね、腑に落ちない部分が多々あって。
ダブル主役のマーニーと杏奈に注力し過ぎた為なのか、脇を固める人々のキャラクターの肉付けやダイアローグの端々、そして話運びがすごく疎かに感じて、説明的だったり取ってつけた感があったりと、まとまりのない印象を受けました。
マーニーの悲劇の一生が淡々と久子のひとり語りと再現シーンであれよあれよと言う間に展開され、ぼくとしてはぜんぜん胸に響いてこないばかりか、久子が話し終えたら杏奈はともかく彩香も号泣って、まじで?となんだか醒めてしまいましたよ。あ、この彩香ってキャラは好きでした。「となりのトトロ」のメイちゃんが大きくなった感じでしたね。
「あなたマーニーでしょ?」ってのは「あなたトトロって言うのね!」にオマージュを捧げた駿リスペクトでしょうか。この声優さん(女優さんなのかな)はすごくマッチしてました。
今作の最大の見せ場のワンシーンに関しては、伏線が随所に張られていたため、そりゃそうだろうね、と驚きこそなかったものの、さすがに鳥肌が立ち、じんじんと感動しましたが、まあこれは幽霊を見たらびっくりすると言った類の反射反応でしょう。
一番好きだったのは、サイロの場面でマーニーが「カズヒコ!カズヒコ!」と杏奈に呼びかけ、「何言ってるの、杏奈よ!」と応えると「ああ!杏奈!杏奈!」と素で返すと言う、とち狂ったシーンで、もちろん非現実なので随所にこう言うちょっとシュールなやりとりなどがあったりするわけなのですが、いっそのことホラーテイストをふんだんに盛り込み、思い切って路線変更してジブリプレゼンツの百合サイコホラー(R18指定)にしたら最高にクールだったかもしれません。「思い出のマーニー」ってタイトルもそれっぽいし。
けれども、「太っちょブタ」のくだりとかネタ的に語りたいシーンはたくさんあるので誰かと観にいってああだこうだとわいわい語るには良い映画ではないでしょうか。ぜんぜん、そうではなくてしんみり心に染み入る涙溢れる感動の映画だよ!と言う声が聴こえてこなくもないですが。
それはそうと大岩のおじさん、あのフクロウ一本で喰ってるんですかね。