2014年8月29日金曜日

STAND BY ME ドラえもん



2014年/日本/95分
監督 八木竜一、山崎貴
原作 藤子・F・不二雄
脚本 山崎貴
音楽 佐藤直紀
主題歌 秦基博
声の出演 水田わさび、大原めぐみ、かかずゆみ、木村昴、関智一、萩野志保子、妻夫木聡

フルCGのしずかちゃんは、原作漫画やアニメ版のそれより内斜視気味に、頬には赤みが差し、口元にかけてふっくらと描かれており、かかずゆみ演じるその声と挙動も相まって大変に可愛かったです。

ぼくは、それがおもしろく書ける時は良いのですが、そうでない場合、あまり映画の悪口を書くのが好きではないので、これ以上、特に今作について言及するところはないです。

ただ、何度もこのブログで書いているのですけれど、お願いですから「感動的な」シーンで「感動的」な音楽を流さないでください。それはこっちで勝手にやりますから。音楽での演出に限りませんが、心は作り手の意図では動きません。ただ真摯にものを作って頂ければ結構です。

一番残念だったのは「成し遂げプログラム」と言うトンデモ設定によってドラえもんが単なる家畜に成り下がってしまったように見えたこと。のび太との友情がしっかりと描かれていないため、二人が共依存者さながらで、エンドロールの「お遊び」でその脚本のダメっぷりを露呈する馬鹿さ加減に心底辟易して映画館を後にしたのでした。

結局、文句を書いてしまいました。ごめんなさい!秦基博さんの主題歌は最高です。好きです!

繰り返しになりますが、しずかちゃんは可愛かったです!でも、可愛くて性格の良い女の子と結婚することに小学生が至上の幸福を見出すって価値観、このご時世いかがなものでしょうか…。


2014年8月23日土曜日

GODZILLA ゴジラ


Godzilla/2014年/アメリカ/124分
監督 ギャレス・エドワーズ
原案 デビッド・キャラハム
脚本 マックス・ボレンスタイン
撮影 シーマス・マッガーベイ
音楽 アレクサンドル・デプラ
出演 アーロン=テイラー・ジョンソン、渡辺謙、エリザベス・オルセン、ジュリエット・ビノシュ、サリー・ホーキンス、デビッド・ストラザーン、ブライアン・クランストン、宝田明

IMAX3Dでのド迫力鑑賞でした。ゴジラを含む特撮怪獣映画の類にそんなに熱量のない僕もゴジラの出演シーン(に限って)は見応えがありました。
予告編でじらされ、本編でもじらされ、ついにゴジラがその全貌を現した時には思わず「おおっ!」と前のめりになりましたね。そのじらっしっぷりの見せ方、演出が大変に巧みで、効果抜群。その分、二時間強の尺の中でゴジラが活躍する場面がものたりず、もっとがっつり見たかったなあ、との不満もあり。そもそも、前情報ではまったく頭になかった雌雄のムートーさんが大暴れ、VSゴジラと言う図式になる展開に、それならそれでこっちもそのつもりで観にきたのに…と若干の期待外れ感を持ったのは確か。ただ、ムートーさん(雌)が意外と良いケツをしていたとか、まさかの接吻シーンとか、せっかくコトに及んで産み付けた卵燃やされてめちゃくちゃ悲痛な咆哮を放ったムートーさん(雌)、いくらなんでもかわいそうとか見所はありました。

それで、ゴジラなんですけれどずいぶんとサイズアップしたようですが、メタボリックななで肩体型でずんぐりとした可愛さがあってすごく造形は好みでしたし、これもまだかまだかとじらされましたが、ちゃんと青白い熱線も思う存分吐いてくれて(体が青白くびかびかしてすうっと胸にため込んでからの、ばはーって言うシーンは秀逸でした)、しっかりとあらゆるものを破壊し尽くした後、悠々と海に帰っていく姿になんとなくめでたしめでたしな感じで、ゴジラおまえ良い奴じゃん!と背中を叩きたくなりました。
まあ、ゴジラは本能に従ってただけで別に人間にこれっぽちも感じるところはないと思いますし、(おそらくは)人もたくさん死んだり、怪我したりして、街は破壊し尽くされてるし、川だか海だかで核爆発しちゃってるし今後の事を考えると、とてもそれどころじゃありませんけど。

渡辺謙は頑なにGODZILLAを「ゴ↓ジ↓ラ↓」と発音していて好感、その割には英語の発音がうまくてびっくりしましたけれど、始終、眉間にしわを寄せた渋面であっちへ行ったりこっちへ行ったりしてた印象で特に役には立っていませんでしたね。と言うか人類のあれやこれやは全くと言っていいほど何の役にも立っていなかったです。

過去の原水爆実験はゴジラを倒すためだった!みたいなエクスキューズにいつものハリウッド的デリカシーのなさを感じたりしましたが英国人監督という事もあってかヒロシマにも若干踏み込んだりして、その部分は面倒くさくなるのであまり深く考えないようにしましたドラマパートを含め脚本は良くできているとは思うものの突っ込みどころは散見。そして、「ゴジラがどーん!」を際立たせるために冗長になるのは致し方なし…と我慢して鑑賞していましたがお父さんのくだりとかもうちょっとテンポ良く語ってくれるとモアベターだったかもしれません。

次回作がもう決定しているようですが、今作でもう充分我慢したのでぜひ次作はもっとゴジラゴジラしてほしいですね。特にゴジラに思い入れのない僕もこのクオリティならぜひ観たい。あと、エリザベス・オルセンの続投にも期待。「キック・アス」と言い本作と言い、アーロン=テイラー・ジョンソンくんは相手役に恵まれますね(ぼくの好みの話ですが)。個人的にはカットバックでエリザベス・オルセン、ゴジラのループでぜんぜんオーケーです。

2014年8月17日日曜日

トランスフォーマー ロストエイジ


Transformers: Age of Extinction/2014年/アメリカ/165分
監督 マイケル・ベイ
脚本 アーレン・クルーガー
撮影 アミール・モクリ
音楽 スティーブ・ジャブロンスキー
主題歌 イマジン・ドラゴンズ
出演 マーク・ウォルバーグ、ニコラ・ベルツ、スタンリー・トゥッチ、ジャック・レイナー、ピーター・カレン(オプティマス・プライム)、フランク・ウェルカー(ガルバトロン)、渡辺謙(ドリフト)、ション・グッドマン(ハウンド)

オプティマス飛べるんかーい!

このシリーズ、これで4作目とのことですが、初鑑賞でした。予習復習(予告編はイヤになる程、観ましたが)一切ナシで、IMAX3Dにエグゼクティブシート、コーラにポップコーンと言う万全の環境を整えて臨みました。
冒頭の一文を除けば、これは誰しもの感想でしょうが、上映時間165分、すなわち2時間45分の尺は長い!と。そりゃ疲れますよ。そんな長い間どっかんどっかんしてたら。
シリーズ初見の為、話やキャラクターの設定が今一つ掴めないと言うことに加え、そもそもこの作品のお話や登場人物の皆さんの人となりも雑すぎてなんだか良く分からないと言うか(良い宇宙人、悪い宇宙人、人間の三つ巴でどっかんどっかん、と言う意味では非常に分かりやすいですけれど)、次第にどうでも良くなっていく為、いろんなものが破壊され、(おそらくは)人もたくさん死んだり怪我したりして、とにかくなんか「うん、大惨事だね!」と率直な感想を持った次第です。

序盤で走った姿のまんま、真っ黒焦げになる主人公の相棒はおもしろかわいそうで秀逸なビジュアルと演出でしたが、終盤、誰も彼のことなんか覚えちゃいませんでしたね。

車がロボットにいわゆるトランスフォームするかちゃかちゃとした動きは、その昔ぼくが遊んでいたおもちゃやアニメ版とは趣が違って、昔日の感がありました。あれって玩具化されてるのかな。

映画の感想からは逸れますが、ラスト30分程はぽりぽり貪っていたポップコーンがお腹の中でごろごろしてきて、加えてコーラがぶ飲みによる尿意も襲い、トイレに行きたいのでもう充分ですから早く終わってください、と集中力が著しく途切れ、それでもエンドロールに何かあるかもしれない、としっかりと最後まで鑑賞したのであわや!と言う状況で非常に辛い思いをしました。ぎりぎりセーフでした。

5作目への引きがあるような展開でしたが、次回作はせめて100分程度に収めて欲しいものです。(ムービーウォッチメンで取り上げられでもしない限り)観ないですけれど。

※なんとなくオーティス・レディングの「The Dock of the Bay」を貼っておきます。


ちなみに、ぼくはマイケル・ベイには何の思い入れもありません。何本かは観ていて「ザ・ロック」は面白かったような…。ただ、基本的にはどの作品も鑑賞後、口あんぐりだった記憶があります。今作は割にまともだったのかな…。そうでもないか。ご興味のある方はまとめて鑑賞すると良いかもしれませんが、責任は一切負えません。

2014年8月8日金曜日

思い出のマーニー



2014年/日本/103分
監督 米林宏昌
原作 ジョーン・G・ロビンソン
脚本 丹羽圭子、安藤雅司、米林宏昌
作画監督 安藤雅司
美術監督 種田陽平
音楽 松村崇雄
主題歌 プリシラ・アーン
出演 高月彩良、有村架純、松嶋奈々子、寺島進、根岸季衣、森山良子、吉行和子、黒木瞳 


前回の「マレフィセント」の感想の冒頭と同じ文章になりますが、男の出る幕はない!って感じでしたね。同じベクトルの愛を主題(というか大オチ)に取り扱っていて、それに加えていわゆる百合要素を盛り込んできたと。この百合描写、奔放なスキンシップと、がっつりマーニーが主導権を握っていた関係から次第にその役割が変化してゆく様を微妙な表情や仕草、言動で描きつつ杏奈の成長物語へと繋げていくと言う意味合いで非常に活きていたと思います。そちら方面が大好物なぼくも序盤のマーニー攻め、杏奈受けのシークエンスはおいしくいただきました。

ところで、作品全体としての感想なんですけれど、ごめんなさい!いまいちでした!

まず、最初に思ったのが作画っていうのか動画っていうのかアニメーションとしてのクオリティが低くない?という事です。
ぼくは普段、全くアニメを観ないので、どうのこうの言える立場でもないのですが、それでもジブリ作品に限って言えばほとんど観てますし、大好きな作品もたくさんあります。それはやはり本来の意義でのアニメーションの感動っていうのを含んだ面白さなんですよね。
今作はもちろんファンタジーではあるんですが等身大の人間を描いているのでリアリズムを軸に描かざるを得ない。けれども、なんだか妙にその点が引っ掛かって集中力を欠きました。
マーニー自身の造形と背景画の美しさには心惹かれましたけれど、変な話、崖の上のポニョってめちゃくちゃな話だったけれどやっぱりアニメーションとしてはすごかったよな、みたいなことを鑑賞中ずっと思い出していました。

それと、原作小説は未読なのですが、脚本がですね、腑に落ちない部分が多々あって。
ダブル主役のマーニーと杏奈に注力し過ぎた為なのか、脇を固める人々のキャラクターの肉付けやダイアローグの端々、そして話運びがすごく疎かに感じて、説明的だったり取ってつけた感があったりと、まとまりのない印象を受けました。
マーニーの悲劇の一生が淡々と久子のひとり語りと再現シーンであれよあれよと言う間に展開され、ぼくとしてはぜんぜん胸に響いてこないばかりか、久子が話し終えたら杏奈はともかく彩香も号泣って、まじで?となんだか醒めてしまいましたよ。あ、この彩香ってキャラは好きでした。「となりのトトロ」のメイちゃんが大きくなった感じでしたね。
あなたマーニーでしょ?」ってのは「あなたトトロって言うのね!」にオマージュを捧げた駿リスペクトでしょうか。この声優さん(女優さんなのかな)はすごくマッチしてました。

今作の最大の見せ場のワンシーンに関しては、伏線が随所に張られていたため、そりゃそうだろうね、と驚きこそなかったものの、さすがに鳥肌が立ち、じんじんと感動しましたが、まあこれは幽霊を見たらびっくりすると言った類の反射反応でしょう

一番好きだったのは、サイロの場面でマーニーが「カズヒコ!カズヒコ!」と杏奈に呼びかけ、「何言ってるの、杏奈よ!」と応えると「ああ!杏奈!杏奈!」と素で返すと言う、とち狂ったシーンで、もちろん非現実なので随所にこう言うちょっとシュールなやりとりなどがあったりするわけなのですが、いっそのことホラーテイストをふんだんに盛り込み、思い切って路線変更してジブリプレゼンツの百合サイコホラー(R18指定)にしたら最高にクールだったかもしれません。「思い出のマーニー」ってタイトルもそれっぽいし。

けれども、「太っちょブタ」のくだりとかネタ的に語りたいシーンはたくさんあるので誰かと観にいってああだこうだとわいわい語るには良い映画ではないでしょうか。ぜんぜん、そうではなくてしんみり心に染み入る涙溢れる感動の映画だよ!と言う声が聴こえてこなくもないですが。

それはそうと大岩のおじさん、あのフクロウ一本で喰ってるんですかね。


2014年8月1日金曜日

マレフィセント


Maleficent/2014年/アメリカ/97分
監督 ロバート・ストロンバーグ
脚本 リンダ・ウールバートン
撮影 ディーン・セムラー
音楽 ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演 アンジェリーナ・ジョリー、エル・ファニング、サム・ライリー、シャルト・コプリー

『アナ雪』に続き、今回も男の出る幕はない!って感じでしたね。
そして、同様に「真実の愛」がテーマでしたが『アナ雪』ではそれは自己犠牲、今作では母性愛と言ったところでしょうか。
『眠れる森の美女』で邪悪な妖精として描かれたマレフィセントに主役の場を与え、コペルニクス的展開で現代的なカタルシスを観客にもたらすファンタジーでもって一級の娯楽作品として仕上げた手腕にまずは拍手喝采。ぼくは、ぜんぜん『アナ雪』より愉しみました(むしろ、そちらの方は途中で居眠りしたり…)。
尺も程々、冗長さも無く抑揚たっぷりにテンポ良く進んでいく展開と、実写であってもすんなり飲み込んでいけるビジュアルの技術力は素晴らしいと思います。

キャスティングの絶妙さも功を奏して、アンジェリーナ・ジョリーのマレフィセントっぷりには感服です。ぼくは、左程好みの顔では無いのですが、それにしてもあの頬骨のライン。頬骨殿堂入りです。しかも、ツノが生えてます。違和感ないです(あるかな)。颯爽と飛びまわり、無垢に愛し、そして、悲痛に打ちひしがれて悪の魅力に取り憑かれるままに呪いを放ち、時にシニカルなユーモアでくすりとさせつつも、最後には真実の愛に目覚めて慈愛に満ちた威厳を放って包み込む。彼女の演技力はやっぱり確かなものだと感じました。

あの何の役にも立たない妖精トリオにキスが下手だと世の男性諸君なら撃沈間違いなしの罵りを受けた王子はさておき、と言う古来のディズニー作品のお約束をぶっ壊したシークエンスの後、マレフィセントが懺悔してオーロラのおでこに軽くキスをするくだり、すごく抑えた演出で、それがまた胸にしんしんと響いて、ぼくのドライアイも流石にもう一回来たら治療も終わりですね、と言うところまできました。

まあ、ぼくも男なのであまりにも登場する男性の扱いがひどい(救いはからすくんのディアバル、良い役者さんでした)と言う嫌いはあるものの、既にお姉さんを抜き去ってしまった感のあるエル・ファニングのアシンメトリーな眉毛のあがり具合も含めてファンタジックに美しいオーロラの造形も良く、非常に「現在」性の高いディズニーの、それもアニメではない実写版のフェアリー・テールとして大変に満足のいくものでした。

『アナ雪』『マレフィセント』ときて、果たしてディズニーが次はどういう一手を打ってくるのか。愉しみなところです。

それはさておき、シャールト・コプリーにもたまには好感な役をあげてください。