新世界 New World/2013年/韓国/134分
監督 パク・フンジョン
脚本 パク・フンジョン
出演 イ・ジョンジェ、チェ・ミンシク、ファン・ジョンミン、パク・ソンウン
僕の地元名古屋でもようやく公開されその初日に鑑賞してきました。しかも、二週間の期間限定上映というからさみしい話しですね。
韓国では470万人を動員したとのことで、さすが民度が高い!まさにその大ヒットぶりも納得の傑作でしたよ。鑑賞後じんわりと「ああ、良かったー!」と言うあの面白い映画を観た後の感触が体中を駆け巡りました。
「え!今日の晩ご飯、からあげにカツ丼!豚汁もあるの!」と言うぼくの大好物てんこ盛りの激シブ韓国ノワールに浮き足立つことこの上ない映画なのですが、アイデア自体は「インファナル・アフェア」などに代表される潜入捜査官もので既視感があるのは確か。また、そこかしこに「ゴッドファーザー」がオマージュされていたり、「仁義なき戦い」っぽくもあったりして。
しかし、そこがまた良いのですよ!
とにかく、演者さんたちの顔が良い!やたらと顔面をクローズアップするシーンが多用されるのですがみなさん味のある顔してます。主役のイ・ジョンジェはもちろんなのですが、ぼくは(初めて見る俳優さんですが)敵対する幹部を演じるパク・ソンウンの小憎たらしいにんまり顔が好きでしたね。
そして、この映画のもう一人の主役とも言える、主人公の兄貴分を演じるファン・ジョンミン。登場シーンこそ軽い感じで飛行機のスリッパを履いたまま空港に降り立ったり、イ・ジョンジェに偽者の時計をプレゼントしたりとユーモアたっぷりに場をさらっていきますが、後に凄まじいまでの侠気とありえないほどの強さを見せつけます。クライマックス、エレベーターの中での暴れっぷりは息を呑む迫力のシーンで見ているこっちもいろんなところが痛くなってきます。ちなみに全編を通して、ほとんど拳銃を武器にすることはありません。だいたい刃物かバットです。痛いです。刺す、切る、殴るの三拍子です。
あ、あと映画はいきなりえぐい拷問シーンから始まり、そこでセメントをごくごく飲まされるのですが、それを見て「んーまずい!もう一杯!」という懐かしいCMを思い出しました。
こちらをご覧ください。
この映画の日本でのキャッチコピーが『“父”への忠誠か、“兄”との絆か。』なのですが、いわゆるこの“父”が主人公をヤクザ組織へと潜入させた警察の上司カン課長であり、演じているのは韓国きっての名優チェ・ミンシクです。役作りなのかずいぶんとぷくぷく太っていましたが、こいつが悪いんです。ある意味ヤクザより悪い。しかし、やっぱり演技がうまい。どこかチャーミングな側面さえ見せてくれます。まあ、悪いと言ってもそこは警察官ですからやむなくなんですが。延辺からのすごいキャラのたった○○○軍団に粛清される憂き目にあってしまう最期のシーンも悲しいながらも可笑しみがありました。この延辺から召集された○○○軍団がまた面白いのですよ。これでスピンアウト作ってくれないかな、って言うくらいです。
ラスト、それこそゴッドファーザーを髣髴とさせる粛清の場面が終わり、煙草をふかしながら物思いに耽るイ・ジョンエをカメラが捉え物語も終わりか、と思いきやここからが本当のエンディングシーン。これが最高!若きイ・ジョンエとファン・ジョンミンのワンエピソードが語られ最後の最後に見せるイ・ジョンエの表情がこの映画のすべてを物語っています。
冒頭にも述べたとおり目新しさっていうのは薄いのですが、それでもこれだけ骨太で重厚感があり現代的でありながらも泥臭い映画をオリジナルの脚本でここまでの作品に仕上げるって、やはり韓国の底力はすごいな、と感じました。
この映画、男性はもちろんなのですが女性が見ても(そしてある趣味の女性であればより)存分に楽しめますよ!アツイです!