2014年2月20日木曜日

ウルフ・オブ・ウォールストリート


The Wolf of Wall Street/2013年/アメリカ/179分
監督 マーティン・スコセッシ
原作 ジョーダン・ベルフォート
脚本 テレンス・ウィンター
撮影 ロドリゴ・プリエト
音楽 ハワード・ショア
出演 レオナルド・ディカプリオ、ジョナ・ヒル、マシュー・マコノヒー

映画が始まって小一時間ほど経ったところでしょうか、繰り広げられるあまりの乱痴気騒ぎぶりに観るに堪えかねてか隣の老夫婦は途中で席を立って劇場を後にしました。ある意味、この映画の面白さを象徴している出来事ですね。とにかく、全編を通してのエネルギッシュなまでの下品さ、これが最大の持ち味だと思います。

「タクシードライバー」に衝撃を受け、「グッドフェローズ」に痺れまくった、スコセッシ=デ・ニーロの「バカ」映画路線大好物の僕としては、この系譜を受け継ぐスコセッシ=ディカプリオの5度目のタッグとなった今作品を大変楽しみにしていましたし、鑑賞後、これはまさにウォールストリート版「グッドフェローズ」だ!スコセッシ=ディカプリオががついに最高傑作を生み出した!と興奮冷めやらぬ気持でした。

とは言え序盤、まずはマシュー・マコノヒーにやられました。
ランチのシーン、大きな手振りと独特なリズムで饒舌にディカプリオにストックブローカーの極意を説く。曰く、重要なのはJERK OFFとCOCAINEだ、と。そして、とんとんとんと胸を叩きながらハミングと奇声。これ、マシュー・マコノヒーのアドリブだそうですね。一生忘れられない名シーンです。鑑賞後もずっとこのシーンを真似してました。
こちらをご覧ください。

※注 マシュー・マコノヒーのハミングが延々1時間ほどループします。


あと、もう一つ冒頭でこれは誰しも思いつくギャグだと思うのですが「フェラーリでフェラ」と言う名場面もありましたね。

圧巻は賞味期限切れの「レモン」が後から効いてきてクラブハウスでディカプリオがぶっ飛んでからジョナ・ヒルがハムを喉に詰まらせて…のエピソード。どんだけこのくだりで尺ををもたすんだよってくらいたっぷりと描写してくれます。芋虫のごとく階段をごろごろして、よじよじと車まで這いずり完全に放送禁止状態でランボルギーニを駆るディカプリオ。お互いブリブリにラリッた状態で電話を奪い合うディカプリオとジョナ・ヒルのやりとりはゆーとぴあのゴムパッチン芸を思い出して抱腹。ポパイのほうれん草をカットバックしてなんとコカインで覚醒し、窒息死しそうなジョナ・ヒルを救い出す不謹慎さに思わず拍手喝采です。

マーティン・スコセッシも御年71歳だそうですが(デ・ニーロと同い年ですね)、これはもちろん最高の褒め言葉ですがホントに「バカ」ですね。179分に渡るこの長尺のパーティーをディカプリオその他のキャスト・スタッフたちを携え嬉々として取り仕切っている姿がありありと浮かんできて観ているこちらもホントに嬉しくなってきます。絶対撮影中コカインキメてるだろ!って気はしますが…。

もちろん、これは賛否両論あるかもしれませんが僕はこの映画のディカプリオの演技は彼のベストアクトだと思いますし、今現在この役を演じ切れるのは彼しかいないでしょう。もともと「栄光と挫折」みたいな役がはまる人ですし、それでいてあのマスクゆえ嫌味気がない。相変わらずのベビーフェイスではあるけれども貫録も出てきて、ウォールストリートをぐいぐいと勢いでのし上がっていき、ドラッグとセックスに力強く溺れていく様を渾身の力で演技していました。

実は、僕が現在勤務しているのは訪問販売の営業会社でして、あのディカプリオの朝礼でのアジテーションは観ていて「超あるある」でした。営業マンを鼓舞する経営者は時代の新古、洋の東西を問わずですね。僕は事務方なので完全に引いちゃってますけれど、それでもグッとくるものがあります。

いつも、映画の中で食事シーンが出てくるとその鑑賞後その食べ物を食べたくなるのですが、これだけドラッグが出てくると…キメタクナリマスネ!

ラスト、ディカプリオの怪しげなセミナーで「このペンを売ってみろ」と問われ、受講者は皆一様にペンの素晴らしさを伝えようとします。その答えは劇中あるシーンで提示されディカプリオがワンセンテンスで表現しています。「需要と供給」。まさにぼくが欲しかったものを与えてくれたスコセッシ=ディカプリオコンビに感謝です!