2014年10月31日金曜日

イコライザー


The Equalizer/2014年/アメリカ/132分
監督 アントワン・フークワ
脚本 リチャード・ウェンク
撮影 マウロ・フィオーレ
音楽 ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
出演 デンゼル・ワシントン、マートン・ソーカス、クロエ・グレース・モレッツ、デビッド・ハーバー、ビル・プルマン、メリッサ・レオ

このブログは19秒では書けませんでした。
今作を観た後は、ついつい行動するたびに秒数を計ってみたりしてしまいます。

プーシキン、屋敷の警備手薄すぎだろ!とか突っ込みどころ満載な映画ではありましたが、132分の長尺の中に万遍なく突っ込みどころが散りばめられている為、なんだか「ん、まあいいか」と言う気分になってくるのと、デンゼル・ワシントンの神々しいまでの説得力のある顔力と演技、そして、彼にアカデミー主演男優賞の栄誉をもたらした傑作「トレーニング・デイ」でタッグを組んだアントワン・フークワ監督の十八番である、けれん味たっぷりの演出力で重厚感のある渋い佳作に仕上がっていました。

鑑賞中、ところどころ「奇妙な」癖の味付け、けれども見覚えのある(良い意味で)変てこな演出の映画だなあ、と思っていたらエンドロールでアントワン・フークワ監督と知り、なるほど!と膝を打ったのでした。長編初監督作の「リプレイスメント・キラー」からそうとは知らずに彼の作品を何本か観ていて、肌が合うっちゅうか好みの監督なんですよね。彼の出自とかハリウッドでの立ち位置って良く知らないのですけれど、毎作、大御所俳優と組みますね。一作目からしてチョウ・ユンファですから。

ともあれ、今作もビッグネームのデンゼル・ワシントンとの二度目のタッグ。デンゼル・ワシントンの魅力たっぷり、特にぼくはお気に入りの俳優さんなので、もうそれだけでごちそうさまなのですが、ともすれば「トンデモB級映画」に陥りがちなアイデアとストーリーを、ぐいぐいと力強く締めて引っ張っていってくれる演技力には凄まじいものを感じます。
白人俳優だったらトム・クルーズあたりが演じるところでしょうが、いささか軽くなっちゃいそうですし、スティーブン・セガールが演じたら「沈黙の…」になっちゃいます。それはそれで観てみたい気もしますが。

予告編で「昼間はホームセンターの従業員、夜は必殺仕掛人」みたいな情報がちらっと頭に入っていたので、もっと小刻みな感じで殺しを請け負って悪を倒すみたいな映画なのかなと勝手に想像していたのですが、ぐっと抑えた導入部から始まり、クロエちゃんを助けてからは最後までずーっと一点に向かってとことん追い詰めるヤツでしたね。モスクワまで行っちゃいました!みたいな。

クライマックスのホームセンターでのシークエンスはアツかったです。バックに流れる音楽も良かったですし、否応なく緊迫感が高まる中、ホームセンターの商品をふんだんに使った殺しのアイデアも抜群、スプリンクラーに濡れるデンゼル・ワシントンをスローモーションで捉えたシーンはクールでした。歌舞伎なら大向こうから声が掛かるところでしょう。
あのハゲのロシア人との肉弾戦はあまり必然性を感じないうえ、デンゼルもハゲなので場面の暗さも手伝ってどっちがどっちだかワケわからなくて面白かったです。現場はさぞかし楽しかったことでしょう。

あ、クロエちゃん、むちむちとしていて可愛かったです。ビッチなクロエもイイネ!

2014年10月18日土曜日

猿の惑星:新世紀(ライジング)


Dawn of the Planet of the Apes/2014年/アメリカ/131分
監督 マット・リーブス
脚本 マーク・ボンバック、リック・ジャッファ、アマンダ・シルバー
撮影 マイケル・セレシン
音楽 マイケル・ジアッキノ
出演 アンディ・サーキス(シーザー)、ジェイソン・クラーク、ゲイリー・オールドマン、ケリー・ラッセル、トビー・ケベル(コバ)、コディ・スミット=マクフィー、ニック・サーストン(ブルーアイズ)

前作、リブート版「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」から、もう三年も経っているんですねぇ。公開当時鑑賞した劇場は今はもう無くなってしまいました…。もっとも、オリジナルの「猿の惑星」は1968年公開と言うことですから、四十数年に渡りこのシリーズは我々を魅了し続けているわけです。人間の代わりに猿が支配する惑星って言うそのワンアイデアが強烈ですもんね。そして、あのパッケージにまでなっている衝撃のネタバレラスト。スゴイですよね。

さて、前作の記憶もうっすらとなっており、とは言えクライマックスの「ノー!」の件だけは否応なく頭に刻まれていて大変にカタルシスを覚えた、そしてラストのエッセンスもにんまり感がありとても面白かった印象を覚えていたのですが、今作の「猿の惑星:新世紀(ライジング)」は予告編などを観るにつけ、「うーん、類人猿と人間の戦いみたいなのか…ノらねぇな…」とスルー気分だったのですが、ムービーウォッチメンに選ばれたこともあり割に普通なテンションで2D字幕版での鑑賞となりました。

結論から言うと、ぼくは全然知らなかったのですが三部作構想だそうで、その二部作目と言うポジショニングからか、いまひとつ猿の惑星的カタルシスに欠いた感はあったものの非常に良く出来た脚本でそつなく面白かったよ、と言うところです。人間関係、類人猿関係(?)が重層的に描かれており、マルコムとアレキサンダー、シーザーとブルーアイズ、また、マルコムとドレイファス、シーザーとコバ、と普遍的な関係性のテーマが盛り込んであり良く練られているなあと感心しました。そして、今日の技術力と俳優陣の演技力の下地があってこそのAPESの存在感。もう、ぜんぜん普通ですもん。もちろん、映画館の隣の席で一緒に見てた友人がいきなりコーネリアになってたらびっくりしますけれど、スクリーン越しに観るその世界は圧倒的に「あり」な感じで受容できる為、コバが馬にのって二丁マシンガンでヒャッハー!してても「おおっ!」てなるのです。コバ、抜群なキャラクターでした。終盤、シーザーとの一騎打ちの場面、手に持ったマシンガンを投げ捨て肉弾戦を挑むも苦戦するとその辺の鉄骨みたいなものを拾って凶器攻撃とか、その戦闘描写にもコバのヒールっぷりと小物感が滲み出ていてグッドでした。

なんか個々では分かりあえたような感じだけれど結局、全体としては相容れないよね…オレ達。よし、ならば戦争だ!みたいなのも示唆に富んでいますし、猿の惑星=人類への皮肉って線は死守してて、いよいよオリジナル版第一作目へと果たしてどんな展開で繋げていってくれるのか、予定では2016年公開とされている三部作完結編が楽しみになる一本でした!

ところで、当世のハリウッド映画ではアフリカン・アメリカンや東洋人を一定割合で出演させなければいけないという話をちらりと耳にしたことがあるのですが、今作ではアフリカン・アメリカンの出演者はもちろんいましたが東洋人は見受けられなかったような…。APESが東洋人(日本人)のメタファーってことで承っておいて良いのでしょうか。

※普通にTSUTAYAとかに置いてあるので貼りますよ。オリジナル劇場版第一作目。

2014年10月3日金曜日

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー


Guardians of the Galaxy/2014年/アメリカ/121分
監督 ジェームズ・ガン
脚本 ジェームズ・ガン、ニコール・パールマン
撮影 ベン・デイビス
音楽 タイラー・ベイツ
出演 クリス・プラット、ゾーイ・サルダナ、デヴィッド・バウティスタ、ビン・ディーゼル(グルート)、ブラッドリー・クーパー(ロケット)、リー・ペイス、マイケル・ルーカー、カレン・ギラン、ジョン・C・ライリー、グレン・クロース、ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン

IMAX3D字幕版で鑑賞しました。エグゼクティブシートを陣取って勝ち組気分に浸ったのも束の間、まさかのポップコーンとコーラを買い忘れるという失態を犯してしまいました。この手の映画は万全の態勢で臨みたかったのに…。

予てより方々から随分とその評判を耳にしており、ぐぐっと期待値を上げての鑑賞となりましたが、その期待に違わず滅法面白くて、久方ぶりにパンフレットを購入してしまいました。
家に帰ってからつやつやと綺麗な出来の良いパンフレットを眺めつつ、ご贔屓のブラッドリー・クーパーは声だけでもイケる!などとニヤニヤしながら満足してその晩は眠りに就いた次第です。

鑑賞中、なんとなく日本が誇るスペースオペラの傑作「コブラ」を思い出していました。
クリス・プラット演じる“スター・ロードことピーター・クイルのセクシーでマッチョな姿形と女癖の悪さや卓越したユーモア、間が抜けているけれどいざとなった時の機転と行動力、それに異星人たちと協力して事を為していくストーリーやSFならではの小道具のアイデア、メカニックなど諸々の造形が通じるところがあってそれを想起させたのかもしれません。

※アレクサンドル・アジャ監督による実写化の話は立ち消えになってしまったのでしょうか…。
画像はプロモーション用のビジュアルポスター。クリス・プラットが演じてもイイネ!
正直言って、何番煎じかって言うくらいの王道のジャンル映画として仕上がっていますし、スクリーンにもその「なんだか懐かしい」感が漂っており、たぶんぼくが覚えている限りで生まれて初めて映画館で映画を観たのは父に連れられて行った「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」なのですが、その時の記憶がふつふつと甦ってきたりして、なんともふんわりした気持ちになりまして、それはさておき、やっぱりこれだよ!これ!こう言うストレートに娯楽できるSF映画が観たかったんですよ!と、上映中、膝を打ち過ぎて真っ赤になったのです。

劇中で重要なキーとなる懐メロミュージックに関しても上述のように世代的にストライクな部分もありますしCherry Bomb」で出撃!とかこぶしを振り上げたくなる感じでサイコーですよね。
70~80年代の音楽を非常に巧みな形で取り入れてあり、そこも狙いなのか、子どもを連れて観にいったお父さん、お母さんも「おっ」となるんじゃないでしょうか。
ぼくのように、昔々お父さんに連れられて初めて劇場で鑑賞したのがこの「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」だった、と言う思い出話が何十年か後にどこかで語られると思うと素敵ですね。
それに相応しい映画だと思いますよ。

ぼくが今作で一番感心したのが、登場する各キャラクターの描き方とその魅せ方です。
ガーディアンズ達はもちろん脇を固める異星人の見せ場もふんだんに盛り込んであって、くすぐられます。一番のお気に入りはマイケル・ルーカー(大好きな俳優さんです)演じるヨンドゥ。侠気たっぷりでワルいんだけれど憎めない、いざ戦いとなったら口笛ひとつで自在に操れる矢のような武器で敵を一網打尽。カッコイイ!
予告編はロケットのひとり舞台だった感はありますが、この映画を鑑賞した人には一様にグルートの株が上がったことでしょう。「可愛いは素敵!」なんて雑誌のコピーでありそうですが、グルートは「無敵で可愛い」って言う最強の属性を持ってますからね。ビン・ディーゼルも良い仕事をしました。

劇中音楽含め過去作へのオマージュ、ロケットの気のきいた台詞の小ネタなど様々な要素を含んでいる今作ですが、とにもかくにも難しいことは言わず、老若男女に肩ひじ張らず楽しんでくださいとオススメできるSFエンターテインメントであることは間違いなしです

※ラヴェジャーズのリーダー、ヨンドゥ・ウドンタ(マイケル・ルーカー)