2016年8月26日金曜日

ゴーストバスターズ


Ghostbusters/2016年/アメリカ/116分
監督 ポール・フェイグ
原作 アイバン・ライトマン、ダン・エイクロイド、ハロルド・ライミス
脚本 ケイティ・ディボルド、ポール・フェイグ
撮影 ロバート・イェーマン
音楽 セオドア・シャピロ
出演 クリステン・ウィグ、メリッサ・マッカーシー、ケイト・マッキノン、レスリー・ジョーンズ、クリス・ヘムズワース、アンディ・ガルシア、チャールズ・ダンス、ニール・ケイシー、カラン・ソーニ

2D字幕版で鑑賞してまいりました。オリジナル版の『ゴーストバスターズ』が1984年公開。映画は大ヒット、一大ムーブメントを巻き起こしましたね。例のテーマ曲があちらこちらで鳴り響いていました。今を遡ること32年前、当時小学生だったぼくは、友人たちと連れ立って劇場に足を運び興奮しながら鑑賞したことをおぼろげながら記憶しております。さて、今回はその主役を男性から女性4人組に挿げ替えたリブート作品。日本での公開前から賛否両論、また、主演の一人であるレスリー・ジョーンズに対するTwitterでの誹謗中傷など話題に事欠かない今作でしたが、ぼくは大変に楽しみましたし、愛すべきオバケ映画ならぬオバカ映画として笑いの渦に包まれた興奮の中で一息に鑑賞し、非常に満足度の高い一本となりました。

まず何と言っても主演4人のコメディエンヌ達の掛け合い、これが最高でしたね。劇場にはちらほら外国人の方もいらっしゃたのですが、もうところどころで我慢しきれず大声で笑ってるんですよ。こちらは字幕の為、若干遅れてフフッとなるのですが次第に釣られて意味も分からず同じテンポで爆笑してしまうと言うホットな体験もありました。お気に入りのクリステン・ウィグが相変わらず妙味を出していて、ぼくはこの人の笑いの「間」が好きなんですよね。大きな動きで笑わせるんじゃなくて割にミニマムなアクションやジェスチャーと台詞回しで笑いを誘うところが好きなんです。今作でのマイ・フェィバリットは、「家賃21,000ドルです」「おい!」の場面ですね。間が良いです。英語だと何て言ってるか失念しましたが、字幕も相当キレがあって良い感じでしたね。

そして、今作で一躍注目株となったのはマッド・サイエンティストのホルツマンを演じたケイト・マッキノンではないでしょうか。本国ではコメディ番組『サタデーナイト・ライブ』で人気を博している話題のコメディエンヌと言うことですが、ゴーストバスターズの武器担当としておいしい場面を何度もかっさらっていました。パッと見はクールビューティーなのですがそのキレっぷりは相当なもの。緊迫した場面でいきなりポテトチップスを食べだして「ポテチの誘惑には勝てない」とか二丁拳銃をべろりと舐めてからのゴーストバスターズ無双ぶりなど最高でした。彼女の魅力なしにはこのリブート版『ゴーストバスターズ』は語れないでしょう。本人も水を得た魚のように嬉々として演じているようで、観ているこちらもハイになっていく感じです。

オバカ秘書を演じたクリス・ヘムズワースもハンサムフェィスとマッチョなボディを逆手にとって存分に笑わせてくれましたし、オリジナル版の俳優陣がカメオ出演していたりと見所は存分です。もちろん、最新のCG技術を使ったビジュアルも抜群で音響と共に迫力があり、できればIMAX3Dで鑑賞したかったところ。オリジナル版へのリスペクトを感じさせながらも、今現在だからこそ魅せるリブート版『ゴーストバスターズ』として充分な完成度を保っているのではないでしょうか。ちなみにエンドロールは最後まで席を立たない方が良いヤツですのでご留意を。一点だけ気になったのが、終盤ゴーストたちとの対決もクライマックス、最終的にどうしようもなくなったら、ヨシ!核兵器だ!と言うのがうーん、アメリカンだなあ…と複雑な思いが胸に去来しました。まあ、それはさておき割に頭をからっぽにして娯楽映画をエンジョイしたい!と言う方にはオススメの映画です。ぜひ劇場に足を運んでご覧頂きたいですね。久々にアンディ・ガルシアの御尊顔も拝めますよ。

ホルツマンは最高にクールです!今後のケイト・マッキノンに注目!

2016年8月19日金曜日

シン・ゴジラ



2016年/日本/119分
総監督 庵野秀明
監督 樋口真嗣
脚本 庵野秀明
特技監督 樋口真嗣
撮影 山田康介
音楽 鷺巣詩郎、伊福部昭
出演 長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ、高良健吾、大杉漣、柄本明、余貴美子、市川実日子、國村隼、平泉成、松尾諭、渡辺哲、中村育二、矢島健一、津田寛治、塚本晋也、野村萬斎

Twitterのタイムラインも喧しく、ネタバレされても敵わんと公開早々にIMAXにエグゼクティブシートを陣取り鑑賞してまいりました。客入りもほぼ満員、熱気すら感じさせる劇場内でしたが、実はぼく、正直言ってそんなにノレなかったんですね。上映終了後、噂に聞いていた拍手があちらこちらで湧き起っていましたが、微妙な心持であったぼくは、うそーん!となってノレない自分にさらに気持ちが沈んでいくのでした。その後、Twitterをチェックしたり色々な方のレビューやブログを読んだりしましたが、皆一様に大絶賛。観客動員数もうなぎのぼりで興行収入もン十億円越え!と大げさに言えば社会現象にすらなっている様子。ぼくは「これがツマラナイと言うお前がツマラナイんじゃ!」「ふふふ…この良さが分からないとは、あんたバカァ」などの幻聴が頭の中を駆け巡り、鬱を患ってしまう程にまで落ち込んでしまいました。いや、面白かったんですよ。でも、なんか台詞は聴き取れないし、あ、あの人名前なんだっけ?とか、演出やカメラワークが何かのアニメの実写版みたいだし、ヤシオリ作戦に至ってはゴジラが歯医者で治療されてるみたいだし…とか様々なノイズが煩わしく頭に響いて、結果「そこまでのものかな」と言う感想に至った訳です。

そうして、鬱になり半ばひきこもり状態であったぼくは「これではいかん!」と、ちょうど北海道へ旅行に行っていたのですが(←ひきこもってない)、その最終日、ユナイテッドシネマ札幌で2回目の鑑賞へと立ち向かったのです。「サッポロでゴジラ」ってなんとなく響が良くないですか。それはともかく、2回目の鑑賞は初見の時のノイズがクリアされて、台詞も割に聴き取れ、演出や小ネタも含めてディテールも掴めましたし、随分と楽しめました。こちらも館内はほぼ満員の入りでしたが今回は上映終了後の拍手はありませんでしたね。初見の時はシリアスな場面にそれが挿入される為、「え?これ笑っていいの」と面喰ってるうちに話しが進んでいってしまってもやもやしたんですけれど、今回はちゃんと笑っちゃうところで笑えたのもポイントが大きかったです。嶋田久作は2回とも笑いましたけれど(あれ、笑って良いんですよね?)。

俳優陣が豪華で総勢328名とのことですが、オールスターキャストではないんですよね。むしろ普段脇で光る俳優さんとか、顔は良く拝見するんだけれど、名前が出てこない!って役者さん(それ以外の人も。原一男監督とか!)がたくさん出演していて、しかもそのキャスティングが激ハマリしてるって言うのが凄いですよね。そういう意味では全然煩くない。そして、長谷川博己と石原さとみですが、逆にこの2人以外にあの配役を演じ切れる人います?ってくらいベストなキャスティングだとぼくは思います。今作では舞台で大きなお芝居を演じるようなメソッドを持っている人が適材だし、過剰なまでに強いキャラクターでないと他に負けちゃいますし、ゴジラにも対せないですもんね。あと、ぼくが感嘆したのは國村隼の台詞回しの凄さ。これは初見の時から感じました。ボソボソ喋ってる感じなのにスッと台詞が頭に入ってくる。この人、どの映画でも基本的にメソッドは変えてないんだけれど、それぞれに馴染むんですよね。もちろん「仕事ですから」と彼は答えるでしょう。

ちなみに、少しエクスキューズしておきますと、ぼくはゴジラに関してはムービーウォッチメンで取り上げられた2014年のギャレス・エドワーズ監督『GODZILLA ゴジラ』(ぼくの感想はコチラ)、通称「ギャレゴジ」しか観ておりませんし、特撮怪獣映画にも特段の関心もありません。庵野秀明監督についても、もちろん存じあげてはいるものの『新世紀エヴァンゲリオン』を始めとしてその作品は観たことがありません。なので、そちら方面の切り口からは何も語ることができないわけです。ただ、今作に関して言えば、そういう人たちにこそ観に行って欲しいというオススメの語り口がありまして、確かに、3.11以降に作られた1本の邦画として、今後映画史に残るであろうエポックメイキングな作品になることは間違いないと思いますし、この映画は大傑作と太鼓判を押す方が多勢であろうことは理解できます。まだまだ、ネット上でも様々な評論や考察などが飛び交っておりますし、二次創作も活発なようです。語るに尽きない作品であることは確かですね。

さて、そんなわけでぼくも何とか2回目を鑑賞して少なからず今作を味わいだしたと言うところですが、やっぱりですね、別にそんな手放しで大傑作じゃん!と言うわけではありませんし、これは単なる好みの問題でしょう。でも、本当に作り手が心血を注いで面白いものを作ろうと思ったらこれだけのものが(予算などの制約がありながらも)作れるんだと言うのは誇らしい気もしますし、単純に娯楽作品として観ても遜色ない作品を仕上げてきた手腕は見事だと思います。あと、声に出して読みたい日本語がたくさん出てくるのも嬉しいですよね。しかも、汎用性が高い。「まずは、君が落ち着け」とか「骨太を頼むよ」、「え、今ここで決めるの?聴いてないよ」とかですね。挙げたらキリがありません。あ、書くの忘れてましたが2回とも唖然とスクリーンに釘付けになったシークエンスはもちろん、ゴジラが放射熱線で東京の街を焼き尽くす一連の場面です。絶望と恐怖が入り混じったシーンが悲愴的な音楽と共に眼前に拡がり、もう手の施しようのない災厄感がばんばんに出てて何とも言えない心持になりました。畏怖の念すら感じましたね。いずれにせよ、もし迷っている方がいらっしゃったらとりあえずは映画館で観ることをオススメしたい、リアルタイムでこの映画を体験してほしい、そんな作品ではあります。

カヨコ・アン・パタースン役を演じた石原さとみ。名言「ZARAはどこ?」を残しました。そして、「特殊なインクを使っているの。カピーは不可よ」は今年の流行語大賞です(ぼくの中の)。

2016年8月6日土曜日

ファインディング・ドリー


Finding Dory/2016年/アメリカ/97分
監督 アンドリュー・スタントン
共同監督 アンガス・マクレーン
製作総指揮 ジョン・ラセター
原案 アンドリュー・スタントン
脚本 アンドリュー・スタントン、ビクトリア・ストラウス
音楽 トーマス・ニューマン
エンドソング シーア
日本版エンドソング 八代亜紀
声の出演(日本語吹き替え版) 室井茂、木梨憲武、上川隆也、中村アン、菊池慶、小山力也、田中雅美、さかなクン、八代亜紀、青山らら

実は前作の『ファインデング・ニモ』は未見なんです。あれだけ話題になったのにもかかわらず機会を逃し続けて、なんと早13年なんですね。DVDで予習する暇もなく劇場へGO、2D日本語吹き替え版で鑑賞してまいりましたが、これが存外楽しめました。面白さと感動が相まって、ここのところ荒みがちだった心がドリーたちの泳ぐ太平洋の海水で綺麗に洗い流されましたよ。

ぼくも元来、物忘れの激しい方でして、そこに加えて近頃は加齢による記憶力の劣化が著しく、もちろん劇中で描写されるドリーの短期記憶障害の症状とは意を異にしますが、決して他人(魚)事とは思えず、ググッと感情移入してしまいました。他にも弱視のジンベエザメや七本足の蛸など所謂ハンディキャップを抱えた海洋生物が登場し、障害を持つ人々をメタフィジカルに描いているわけですが、現実の問題はどうあれ、大人も子供も楽しめる非常に娯楽性の高いアニメーションとして落とし込んであって、物事をポジティブに捉えようと言う前向きさにぼくは好感を持ちました。

映像のクオリティの高さはもちろん、海洋生物たちの泳ぐ横の動きに対する、今回の舞台である水族館・海洋生物研究所を巧く利用したぴょんぴょんと飛び跳ねたりする(あるいは鳥のベッキーに運ばれ宙を舞う)縦の動きがスクリーンに奥行きを与えて、アクションシーンが非常に豊かで楽しいものでした。物語も終盤、蛸のハンクがトラックを運転し果てはトラックごと海に突っ込むと言う突っ込みどころ満載のシーンがあるのですが、このぶっ飛び具合もぼくとしてはオーケーでしたし、あそこでルイ・アームストロングの『What a Wonderful World』が流れるに至っては、うん、まあ細かいことは置いといて最高じゃん!となった次第です。

この蛸のハンクが今作のキーパーソン…パーソンではないですが、とにかく最高なんですよね。保護色を使って何にでも変身できるし、海の中も陸の上もなんのその。ベビーカーの運転から前述のようにトラックの運転までお手の物でチートっぷりがハンパない。でも、そんな彼も辛い過去を背負っていて、根は優しく淋しがりな蛸さんなのです。ちらっと『ズートピア』のニックを彷彿とさせますね。彼の面目躍如の活躍っぷりでストーリーがグングンとテンポ良く動いていく感じですね。ドリーとのパートナーシップも抜群に良く、またまた、ディズニー・ピクサーに名コンビ誕生と言ったところでしょうか。

話は逸れますが、本編に先駆けて流れる同時上映の『ひな鳥の冒険』が素晴らしいんですよ。思わずこちらのエンドロールで拍手しそうになりました。実写とアニメーションのギリギリの線を描く映像のクオリティと幼い命が恐怖心に打ち克って世界の美しさに目覚めるテーマ性を凝縮した至高の6分間でして、こちらも含めて本編も親目線で観れちゃってそれがギュンギュンくるんですよね。ドリーの両親の娘を思う気持ちとハンディキャップを持った者に対する接し方、すごい沁みます。もちろん、ひな鳥やドリーなどの当事者目線でも充分にノレますので、その辺りの懐の深さはさすがと言った感です。

両親が貝殻を並べて家までの道標を作り、いつ帰るともしれぬドリーを待つ。そして、感動の再会なんてベタですけれども、そんなベタベタな場面でやっぱりホロリとしてしまう自分に少し安堵しました。そして、例えばドリーのような記憶障害って自分や自分の両親の認知症、あるいは介護問題みたいな話にもつながってくると思いますし、ハンディキャップを持った人々との対し方、あるいはもし自分がハンディキャップを負ったとして、どう世界と向き合っていくかみたいな話もあると思うんでよね。エンドロールで流れる『Unforgettable』が胸の底にしんと深いものを残します。ちなみに、色々と意見のある八代亜紀さんはぼく的にはオーケーでしたよ。八代亜紀バージョンの『アンフォゲッタブル』もグッドでした。

同時上映の短編『ひな鳥の冒険』(原題:Piper)。出色のクオリティ。ひな鳥ちゃんがきゃわわなんです。