監督 周防正行
脚本 周防正行
撮影 寺田緑郎
音楽 周防美和
振付 パパイヤ鈴木
主題歌 上白石萌音
出演 上白石萌音、長谷川博己、富司純子、田畑智子、草刈民代、渡辺えり、竹中直人、濱田岳、岸辺一徳、小日向文世、妻夫木聡
何度か予告編を目にしており、鑑賞前から「舞妓はレディ~♪」というフレーズが頭の中をぐるぐると回っていました。「どこまでもどこまでも走れ走れいすゞのトラック~♪」なみの粘着力でちょっと気が狂いそうでしたけれど。
800名を超えるオーディションから主役の座を射止めた上白石萌音ちゃん、可愛かったですね。
田舎から出てきたばかりの朴訥とした娘っ子が舞妓へと、さながら蝶が羽化するように神秘性すら感じさせて成長していく様を演じたその演技力に脱帽しました。
白塗りに紅をさした舞妓の姿になって「わあ、綺麗!」とならないといけないわけで、その完成形から引き算しての役作りと演技は大変にご苦労があったと思いますし、彼女をキャスティングしたのは大正解でした。そして、びっくりしたのがその歌唱力。歌がうまいのはもちろん、ちょっとかすれがかった、でも、高音になると透き通ったように伸びていく歌声が素晴らしい!
周防正行と草刈民代は往年の伊丹十三、宮本信子のコンビを思い起こさせますね。映画自体も伊丹十三作品に通じるところがあって、ワンアイデアでエンターテインメント映画を仕上げていく手法と手腕が重ね合わさります。
芸事を描いているだけあって脇を固める俳優陣も芸達者揃い。周防監督作品おなじみのメンバーに加え、今回、出色だったのは髙嶋政宏。テレビ、映画のみならず舞台も多数踏んでいる役者さんですから、今作のようなカリカチュアライズされた役柄とミュージカル仕立てには相性抜群。存在感たっぷりで笑わせてもらいました。
そして、相変わらずの演技の幅広さで巧者ぶりを発揮するのが田畑智子。これ、存外難しい役だと思うのですがさらっとこなしていてさすがだなあと感心しました。
他にも、富司純子を筆頭に岸辺一徳、濱田岳など総じてその達者ぶりで映画を引き締めていました。妻夫木聡が登場した時はきゃーっ!となりましたよ。
ただですね、“ゴキブリはん”こと言語学者役の長谷川博己、初見の俳優さんだったのですが(後で聞いたら、ずいぶんと人気のある方でした)、この人がぼくは全く好みではなく、インチキ京都弁も聞き苦しくて、ミュージカルパートも「ううっ」となり、そのキャラクターからしても、いったいなんで春子がこの男に好意を寄せるのかまったく理解できず、ラストシーンは思わず「は?」とスクリーンに向かって聞き返したほどでした。すみません、完全にぼくの男性の趣味の話です。
映画はストーリーこそ、先日鑑賞した「TOKYO TRIBE」なみに「ごめんなさい、聞いてませんでした」くらいの類型的かつ既視感のあるもので、終盤明かされる春子のお母さんのくだりも「お、おう」と言ったライトな感じでぼくは受け止めましたが、日本版「マイ・フェア・レディ」として先に述べた出演陣とともに周防正行監督の芸達者な画面作りと演出で、一級の娯楽作品として楽しんで鑑賞できる一本だと思います。
竹中直人と渡辺えりは、いささか食傷気味ですけれど。いなかったらいなかったで寂しいのかな。
※竹中直人さん、今作では男衆(おとこし)と言う芸妓さんや舞妓さんの着付け師役で出演。
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