2015年9月11日金曜日

ナイトクローラー


Nightcrawler/2014年/アメリカ/118分
監督 ダン・ギルロイ
脚本 ダン・ギルロイ
撮影 ロバート・エルスウィット
音楽 ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演 ジェイク・ギレンホール、レネ・ルッソ、リズ・アーメッド、ビル・パクストン

ムービーウォッチメンで取り上げられるに先駆けて、友人(そこそこクズ)から「すごいクズが主人公の面白い映画がある」とレコメンドされ自称‘クズの元締め’であり、またクズ人間大好きのぼくとしてはこれは観ねばならん!と劇場公開間もなく足を運んでの鑑賞でした。

いや、確かにこれは面白かった。そして、この映画の主人公であるルイス・ブルームこそ紛れもなく人間のクズ。そこに描かれるクズっぷりにより嫌な気分になるどころか、いっそ清々しい程であり、ある種の爽快感をもって劇場を後にした次第です。

まず触れなければならないのは主演のジェイク・ギレンホールの徹底したメソッド演技でしょう。役作りのために体重を9kg落としたとかで、痩せこけた顔つきにぎょろぎょろと目を剥いて、ネット上で拾い漁った自己啓発のプラクティカルなフレーズを交え能弁に語り、とにかく自己主張が強い強い。そして、目的の達成の為なら手段を選ばず、モラルなどお構いなしに突き進んでいくルイス・ブルームと言う人間をまさに「役にのめり込んで」演じ切っています。

メキシコ料理のレストランでレネ・ルッソと対峙するシーンが良かったです。めちゃんこストライク・ゾーン広いですね!と言った感想はもとより、まったく深みのない上滑りなボキャブラリーを駆使して一点集中突破の揚げ足取りで相手の弱みを突きまくり、ペラペラとまくし立てるその様はまさに「ああ言えば上祐」(懐かしい)状態です。

名人芸、上祐史浩氏のフリップ投げをご覧ください。

これが長編監督デビューとなる脚本も兼ねたダン・ギルロイも冴えています。盗品を売りさばいて口を糊していたこのクズ男に訪れる転機と成り上がり、それに巻き込まれていく人々の顛末を、ここからここまでって感じで巧く切り取って描いており、なんだか納得させられちゃうパワーがあります。撮影もスタイリッシュで良いですね。撮影監督のロバート・エルスウィット、さすが良い仕事をしています。夜のロサンゼルスをカメラ片手に徘徊する“ナイトクローラー”感がばっちりと醸し出されていて映像に説得力があります。

ラストの落とし方も見事。なんだかんだ言って勤労意欲だけは人一倍の主人公。そこにポエティックな自己啓発のキラーフレーズを乗っければあら不思議、ブラック企業の出来上がりです。こんな上司の下では絶対に働きたくありませんが、お前の仕事ぶりはおもしろいから傍から覗かせてくれと言うところでしょうか。

ところで、ショッキングな映像ってモザイク掛かっていた方がより生々しく見えませんか。ぼくが別の機会にモザイクを見すぎているせいかもしれませんが。

“良い仕事”の為なら労を惜しみません。見習いたいものです。