2014年1月29日水曜日

ビフォア・ミッドナイト


Before Midnight/2013年/アメリカ/103分
監督 リチャード・リンクレイター
脚本 リチャード・リンクレイター、イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー
撮影 クリストス・ブードリス
音楽 グレアム・レイノルズ
出演 イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー

未見だった「ビフォア・サンライズ 恋人までの距離」「ビフォア・サンセット」をDVDで予習してから、その足で劇場に向かっての鑑賞となりました。まるっと一日ジェシーとセリーヌの恋模様、人生模様を眺めていた格好ですね。

結論から言うと、今作「ビフォア・ミッドナイト」がぼくにとって最も好みの作品でした。イーサン・ホーク演じる主人公ジェシーと現在のぼくが同じ年齢ということが少なからず影響しているのは間違いありません。

一作目ではどこか上滑りに聞こえた二人のやりとりも今作ではするすると耳に入ってきたというか、より一層心に沁みましたし「わかる、わかる」と感じる部分が多々あったように思います。
興味深いのは、一作目から二作目、三作目とより自分にとっておもしろさ度合いが上がってくるというかより好きな作品になっていったということです。
映画って、特にこういうタイプの映画ってそれを鑑賞するときの自分の年齢や環境などの状態・状況によってぜんぜん受け取り方が変わってきますよね。
劇場でリアルタイムに映画を鑑賞する醍醐味でもあります。

さて、今作の見どころは何と言ってもホテルでの二人の喧嘩シーンでしょう。ありえないくらいの長回しで「ああ言えば上祐」(懐かしい)の応酬。しかも、三作目にして初の濃厚な描写のセックスシーンかと思いきや!からのおっぱいまるだしで激怒するジュリー・デルピー。「迫力」という言葉が頭の中を駆け巡りました。
そして、イーサン・ホークがやれやれとズボンを下ろしたタイミングでおもむろにジュリー・デルピーが服を着るという噛み合わなさ。キレたセリーヌがバタンとドアを閉めホテルを出て行ったと思ったらすぐ戻ってきてまたおっぱじめる展開が二度繰り返され、こりゃー、夜が明けるまで終わらんぞ…ビフォア・ミッドナイトどころかまた一作目に戻ってビフォア・サンライズまで続いちゃうぞこの喧嘩、と覚悟しましたが最後の最後にはルームキーを置いて出て行ってしまうセリーヌ。
正直、ほっとしました。

ここから、エンディングまでの展開。これがこの「ビフォア」シリーズの真骨頂ですよね。今日一日、DVDと劇場で夜明け前から真夜中前までこの二人を眺めてきて良かったよ、おまえらなんだかんだ言って素敵だぜ!とエールを送りたくなった気分です。
シリーズすべての作品が「この後」の予感を感じさせて終わる余韻たっぷりなのが良い気分にさせてくれますよね。

あと、今までの作品にはなかった皆で食卓を囲んで語り合うシーン、好きでした。ああいう風景憧れるんですよね。地中海の昼下がりに屋外で白ワインとギリシャ料理。とりとめもなくかわされる会話。良い雰囲気でずっと観ていたい、っていうか参加したい!

こういう作品って稀有なものですよね。この作品を生み出しずっと手塩にかけて育て上げてきたリチャード・リンクレイター、そして脚本にも参加している主演の二人、イーサン・ホークとジュリー・デルピーに拍手を送りたい。
二人は良い歳の取り方をしてますよね。イーサン・ホークの眉間の皺がどんどん深く刻まれていくのが印象的。眉間の皺好きにはたまりません。
ぼくは、ぜんぜん熟女マニアではなくむしろ正反対の方向性なのですが今作のジュリー・デルピーが一番タイプでした。

四作目はあるのかな…。また、9年後に期待です。

2014年1月23日木曜日

ドラッグ・ウォー 毒戦


毒戦 Drug War/2013年/香港・中国合作/106分
監督 ジョニー・トー
脚本 ワイ・ガーファイ、ヤウ・ナイホイ、ジョニー・トー、リケール・チャン、ユ・スィ
撮影 デビッド・リチャードソン
音楽 グザビエ・ジャモー
出演 ルイス・クー、スン・ホンレイ


もう大人ですし良識ある一映画ファンですので劇場マナーを守り静かに鑑賞していましたが、心の中では「すげえ!すげえ!」「いいっ!いいっ!」と声が出っぱなしでした。
それほどエキサイティングな映画であったということで、まだ年明け間もない1月ですが早くも今年ベスト級の感触たっぷりの超弩級の面白さでした。

冒頭の運び屋エピソードこそ「うへえ!」となりましたが(ぼくはうんこ恐怖症なのです)、そこからの緊迫感たっぷりの神経戦を経て中盤から突如始まる爆発的な銃撃戦の嵐に手に汗握り歯を食いしばりの緊張感溢れかつ刺激的な映画体験でした。

スン・ホンレイがジャン警部を好演、文字通り劇中での囮捜査間としての演技っぷりも見事。突如、着替えだして「ははは」と笑い出した時には、ん?となりましたが、ああそういうことだったのかと納得。しかも、超絶ものまねがウマい。後のものまね四天王ですね。
そして、捜査上致し方なくコカインを吸引して「虫が這いずり回ってる!」と中毒になったところを、お水がぶ飲みと氷風呂でなんとか切り抜ける姿にリアリティがあるんだかないんだかわからないままに「す…すげえ」と感じ入りました。

中盤登場する、聾唖兄弟。これが最高に格好良い!最初はなんだか情けない感じで義理に厚く涙もろい風情で兄貴分の嫁さんの弔いに本物のお金を燃やしたりして泣かせの展開なのですが、いざとなったらめちゃんこ強い!聾唖のため敵の襲撃に気づくのが兄貴は赤い警報ランプ、弟はなんと常時身に付けている防弾チョッキにずどん!と穴が開いて初めて「うわ!」ってなるというアイデアも秀逸ながら、その後の拳銃使いにこいつらただものじゃない感が半端なかったです。思わず「デスペラード」を思い出すガンアクションでした。
終盤にもこの兄弟が良い感じで登場して、ひと暴れした後にあえなくを最期を迎えるわけですが、この二人でぜひともスピン・オフを作って欲しいほどの魅力的なキャラ立ちでしたね。

なんといっても最大の見せ場はラスト、小学校前でのスクールバスを大道具に使った怒涛の銃撃戦。ジョニー・トー監督の「よし、こいつら全員殺しちゃお!」と言う意気込みがスクリーン越しにびしびしと感じられてこれぞ真骨頂と言わんばかりのシーンの連続にギンギンでした
いわゆる「キタノ撃ち」(ぼくが勝手にそう呼んでいるだけですが)で、直立不動で水平に銃を構えてはあっちを撃ちこっちを撃ちとしながらも、随所にアイデアやドラマが細かく盛り込まれていて、ぼくが姑なら窓の桟をすっと指をなでて(隅々まで掃除が行き届いてる、できるわねこの嫁!)と独りごちるところです。

それにしても、結局はルイス・クー演じるテンミンの超手前勝手な自己保身が全ての元凶ということで、まあそれに相応しい惨めったらしい最期を迎えるのですが、巻き込まれた人々は本当にはた迷惑な話です。香港の7人衆なんかその最たる犠牲者ですよね。
香港の7人衆、黒幕のわりにみんなしょぼかったのが笑えました。特におなじみラム・シューのネーミングもそのままのファットが良かったですね。

決して後味が良いとは言えず、救いようのない話でありながらも劇場を後にする時には一抹の爽快感とたっぷりの満足感を味わえた、まさにぼくにとっての傑作でした。

2014年1月19日日曜日

大脱出


Escape Plan/2013年/アメリカ/116分
監督 ミカエル・ハフストローム
脚本 マイルズ・チャップマン
撮影 ブレンダン・ガルビン
音楽 アレックス・ヘッフェス
出演 シルベスター・スタローン、アーノルド・シュワルツェネッガー、ジム・カビーゼル

スタローン、シュワちゃんの本格的初競演、二人の“今だからこそ”の掛け合いをたっぷり楽しませてもらいました。

CGやワイヤーアクション全盛の中、この二人に似合うのはやっぱりこういう体を張った肉弾アクションですよね。なかでもスタローンはそのキャリアの中でも突出した「知的な」役柄で新鮮でした。
いわゆる脱出ものとしてはお約束の展開の応酬なのですが、そのお約束が気持ち良いというか観賞後感の良いスカッとした映画でしたね。

それにしてもシュワちゃんが格好よかった。オールバックに髭をたくわえてちょっと絞ったのかな、精悍な印象で「このおっさんクールじゃん」感がたまらなかったです。
防犯カメラに満面のいたずら笑顔でVサインするシーンは最高!
そして、なんといっても最大の見せ場はスローモーションで目のドアップから映し出して重機関銃をドカドカとぶっ放すシーン。「シュワちゃん使って何撮るの?これでしょ!」と言わんばかりの監督の演出にこちらもわかってらっしゃる、とにんまりしっぱなしでした。

スタローンの冒頭の刑務所からの脱獄の過程、船内刑務所の管理体制や警備の点でうーんと疑問点が浮かんでは消えたりしましたが(バビロンゆるすぎ…とか)、大筋の伏線はラストでぐいぐい回収されて(あのシュワちゃんのスタローンへの「ねーねー」という執拗な誘いかけなど)すっきりとまとまっていました。

微笑みデブ(ヴィンセント・ドノフリオ)は久しぶりにスクリーンで見たと思ったら自業自得でかわいそうな最後でした。老けましたね。

あと、今回改めて気づいたのですがどの映画の中でもシュワちゃんの娘役は超絶美人(今回はカイトリオーナ・バルフェさん。アイルランド出身のモデルさんのようです)。

くもりときどきミートボール2 フード・アニマル誕生の秘密


Cloudy with a Chance of Meatballs 2/2013年/アメリカ/95分
監督 コディ・キャメロン、クリス・パーン
脚本 エリカ・リピノヤ、ジョン・フランシス・デイリー、ジョナサン・ゴールドスタイン
音楽 マーク・マザースボウ
出演 ビル・ヘイダー、アンナ・ファリス、ジェームズ・カーン


前作は公開当時全くスルーしていたので、DVDで予習してからの今作の鑑賞でした。
とりあえず、前作を鑑賞し終えた時からうずうずしていたのですが、鑑賞後おもむろにマクドナルドに入りダブルチーズバーガーを食べました
1作目、2作目を通じて様々なフードメニューが登場するわけですが、やはりチーズバーガーがどうしても食べたくなりましたね。
食べ物や食事のシーンが出てくる映画は大好きですし、映画を観てそれにちなんだものを食べる、と言う行為も好きです。
とにもかくにも食欲は満たされました。

前作はわりに牧歌的な結末に落ち着いたのと比較して、悪役がはっきりとした目的と意思を持ってコトを為し、最終的にはチーズバーガーに捕食されてしまうというオチなだけあってちょっとグロテスクな印象を受けました。
フード・アニマルをプロッセサーに投入してフード・バーにしてしまうだなんて…。なんだか、人肉饅頭やスィーニー・トッドを思い起こしますね。
食べ物を擬人化するというアイデアはある意味では非常に危なっかしい設定です。しかし、そこは徹底的にフード・アニマルを「善きもの」として描き、愛らしいキャラクター付けや、それこそアニメーションならではの味付けでうまくかわしていたのかな。だからこそ、チェスターVの極悪非道振りと悲惨な最期を対比的に描いてバランスをとったのかもしれませんね。

フリントのお父さんとイワシを釣るピクルス一家の情景はほろりとさせるものがありました。そして、最後には我が愛する息子と念願の…。親子として一作目からお互い成長した二人を眺めることができたのは収穫。

でも、フード・アニマルと共存ってどうなのかなあ。フード・アニマルたちもモノを食べるわけだし、なんか倫理的な問題で頭がくらくらしそうです。ぼくたちの住む世界でも「踊り食い」ってのがあったりしてなかなか考え出すと頭が痛いですが、食卓に並ぶ食べ物には申し訳ないけれど、おとなしくじっとしていて欲しいものです。

1作目はなかなかマッドな映画だなあ、光るグミとか出てきて、ちょっとしたドラッグムービーみたいだな、市長もただの食いしん坊で何がしたかったのかわからんし、とけっこうそのカオスぶりが大変に面白かったのですが、今作に関しては、ちょっと、どーん!っていうインパクトに欠けた感はあります。勧善懲悪ものになりすぎちゃったというか、普通の映画になっちゃってましたね。
あと、これはぼくの好みですがサム・スパークスにぜんぜんきゅんきゅんこないのでそこらへんの楽しみがなかった(今回、特に見どころが無いような)のも残念。