12 Years a Slave/2013年/アメリカ・イギリス合作/134分
監督 スティーブ・マックイーン
脚本 ジョン・リドリー
撮影 ショーン・ボビット
音楽 ハンス・ジマー
出演 キウェテル・イジョフォー、マイケル・ファスベンダー、ベネディクト・カンバーバッチ、ポール・ダノ、ルピタ・ニョンゴ、ブラッド・ピット
黒人監督初のアカデミー賞作品賞、ルピタ・ ニョンゴの助演女優賞など数々の授賞の栄冠をモノにした話題の作 品ということで、予告編でも何度か目にしており、 作品柄、覚悟を決めてというか折り目をただして鑑賞しました。
キツかったーというのが正直な感想です。
人種差別、 奴隷制というものが存在していた、 あるいは存在していると、もちろん知ってはいますし、 過去にも映画に限らず様々なメディアでその実態を目にはしていま した。でも、 やっぱりぜんぜんそれは遠い国のお話しであって自分のリアルとは 隔絶された世界の悲劇のひとつとしての認識しかないわけです。
奴隷としてのプラッツが木に首を括られ爪先立ちで何時間も放って おかれるシークエンス。 延々と時にアングルを変えてカメラがそれを捉えるシーンの残酷さ にまだか!まだか!と身悶えしました。 カンバーバッチがロープを切ってドサっと地面に転げ落ちた時には こちらもグッタリです。すごい描写でした。
描写と言えば撮影が良かったですね。 寄り過ぎるぐらいのアップショット、 かと思いきや突き放したようなロングショット。 この引きの画が印象的でした。 あまりカメラが動き回らずフレーミングされた画面の中で登場人物 が感情を押し殺し、爆発させわめき散らし泣き叫ぶ。 アメリカ南部のカラッとした暑さを思わせる陽射しの陰影も相まっ てどうにもこうにも息が詰まるような緊張感を生み出していました 。
助演女優賞授賞のルピタ・ニョンゴはもちろん主演のキウェテル・ イジョフォー、そして、マックイーン作品の常連であり、ぼくの大好きなマイケル・ファスベンダー、 皆それぞれ素晴らしい演技でした。渾身、という言葉がぴったりでしょう。ぼくの浅はかな想像力でも今作でどの役柄を演じた俳優さんもホン トに辛かっただろうな、と感じました。
もちろん、 大変に意義と誇りをもって仕事をされたことと思います。
昨年度のベストにリドリー・スコット監督『悪の法則』を挙げたのですが、
鞭を打つ人間、鞭で打たれる人間、どちらも嫌ですよね。