2014年3月5日水曜日

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅


Nebraska/2013年/アメリカ/115分
監督 アレクサンダー・ペイン
脚本 ボブ・ネルソン
撮影 フェドソン・パパマイケル
音楽 マーク・オートン
出演 ブルース・ダーン、ウィル・フォーテ、ジューン・スキップ、ステイシー・キーチ、ボブ・オデンカーク

ここぞとばかりに意地汚くたかる親類縁者に母親が怒り心頭で罵るシーンでfuck yourselvsと言っていたので、なるほど罵る相手が複数の時は複数形になるんだなあと妙なところで感心し、son of a bitchの複数形がsons of bitchesと知った時以来の衝撃でした。高齢の出演者が多いせいか英語が聞き取りやすくスラングとかもなかったようで、ああこういう言い回しをするんだ!などと英語の勉強になりました。

モノクロにしたのはもちろんあえてなんでしょうけれど、その意図がぐっと汲み取れるほどではなかったです。時代背景やストーリー、登場人物のリアルさと言うかグロテスクさをぼかしたかったのでしょうか。カラー版も見てみたいですけれどあんまり印象変わらないような気もします。

ブルース・ダーンは良かったですね。ちょっと今年は分が悪くアカデミー賞はノミネートにとどまりましたが素晴らしい演技でした。アルツハイマーまではいってないけどいささかボケ気味、頑固でほとんどアル中、しかし頼まれると断れないお人好しと言う複雑な人物を抑制の効いた演技でしかし能弁に魅せてくれました。
入れ歯を失くして線路で探して見つけ出し「父さんのじゃない!…冗談だよ」「俺のじゃない…俺のに決まってんだろ!」のやり取りとか手紙を強奪されて「諦めなよ…やっぱり探しに行く?」ばっと振り返って「無言(目がキラキラ)」のシーンとかチャーミングで好きでした。

まあ、ほとんどの登場人物が主人公を含めて人間の嫌な部分を見せつけ、だめな言動をかますと言うていたらくですからこちらも良い気分にはならないのは確かです。しかし、老人、外国、モノクロという自分的なリアリティの薄さからどこか遠くのすごくフィクショナルな話に見えつつも、いやこれはぜんぜん自分と地続きだよ、めっちゃ普遍性あるよ、と鑑賞中に心によぎってからは、これぞアレクサンダー・ペインの力量というかこういう作品ならではの本領発揮に気圧されて参ったな、と言う感じでした。そこで、ラストのトラックのシーンが効いてくるわけです。なので、どちらかって言うと見た目とか口に入れたとたんって言うより後味ほのかにってタイプの映画ですね。

これ、邦画の副題が「ふたつの心をつなぐ旅」ってなってるんですけれど、もともとあの家族って主人公がお父さんっ子、兄貴がお母さんっ子ぽいですよね。だから主人公とお父さんが旅に出てドラスティックに心が繋がるって感じはあんまりしなかったです。もともと、お父さんはともかく主人公はお父さんよりですもんね。あの兄貴とお父さんの絆がここへ来て深まる!みたいなのだったら納得の副題なんですけれど。

それはそうと歳を取るとなんでメニューに載ってないもの頼もうとするんですかね。