2014年7月5日土曜日

オールド・ボーイ


Oldboy/2013年/アメリカ/103分
監督 スパイク・リー
脚本 マーク・プロトセビッチ
撮影 ショーン・ボビット
音楽 ロケ・バニョス
原作 土屋ガロン
出演 ジョシュ・ブローリン、エリザベス・オルセン、シャールト・コプリー、サミュエル・L・ジャクソン

ぼくは、予てから土屋ガロン原作、嶺岸信明画による漫画「オールドボーイ ルーズ戦記」のファンでして土屋ガロンこと狩撫麻礼のハードボイルドかつロマンティシズム溢れる描写と、もちろん斬新な設定の妙、そしてあまりにポエティックな主人公に対する復讐の動機に大変心くすぐられるものがあり、嶺岸信明のいささか古臭い絵柄も相まって何度も読み返していたほどです。
そこへ、当時この漫画を原作とした今リメイク版のオリジナル作品であるパク・チャヌク監督の「オールド・ボーイ」が公開され劇場へ走ったわけですが、映像の斬新さとチェ・ミンシクの怪演に加え、独特のユーモア、その暴力性、グロテスクな描写と演出、儒教の国である韓国ならではの復讐に至った動機が明かされ、怒涛の鬱展開へと雪崩れ込んでいく終盤からラストに衝撃を覚え、何とも言えない後味の悪さに唸らされて、非常に強い印象を残すものだったことを記憶しています。

そこで今回、今更ながらのスパイク・リーによるリメイク版と言うことで、期待半分、不安半分と言った面持ちで鑑賞して来ましたが…不安の方が的中してしまいました。

序盤、やさぐれたアル中のジョシュ・ブローリンがだらしない身体で醜態を晒す場面から寝ゲロを吐いて監禁されるまでは微笑ましく、お、良い感じじゃん!と観ていたのでしたが、そこからはネズミと戯れるジョシュ・ブローリンが何とも愛らしいのと、先だって鑑賞したリメイク(リブート)版「ロボコップ」ではついぞ耳にすることのできなかったサミュエル・L・ジャクソンの「マザー・ファッカー」が堪能できたというのが見どころのピークでした。

やはり、大ネタを知っているのとオリジナル版の印象が強すぎるせいで、どうも集中力に欠き、なんだろう、面白くないな、と首を捻っているうちに映画が終わってしまいました。鈍器や刃物を使ったアクションや大ネタの復讐の動機と言うのも韓国が舞台だから生きたんじゃないかと言う側面もあって、なんとなく説得力が感じられなかったのと、もうひとつはスパイク・リーの(今作においては)力量不足と言うか…もしかしたらこういう映画に向いてないのかもしれません。もちろん、パク・チャヌク監督の力技がすごすぎたと言う面もあると思いますが。

役者陣、要のシャールト・コプリーの魅力もイマイチ。それにあの家族も単なる変人一家のように描かれていて、しかも、ジョシュ・ブローリンは学生時代から酒浸りの性格悪いヤツだったし、どっちもどっちすぎて深みがないですよね。
あのオルセン姉妹の妹、エリザベス・オルセンは好演でした。特におっぱいが良い演技をしていましたね。これは良い点。しかし、あのぼかしはひどい。セックスシーンもさることながらショットガンで頭部を打ち抜くシーンのあれはいかがなものでしょうか。興が醒めることこの上ないです。

音楽もまずく、全体としては凡庸なB級サイコスリラーに仕上がっていたというところで、やはり、リメイクとしては失敗作、と言うのがぼくの感想です。

どうせなら、原作漫画を翻案しつつ、パク・チャヌク版の余韻を残しながら大胆に全く新たな作品世界に挑んだほうが良かったのではないでしょうか。
この映画で初めて「オールド・ボーイ」に触れた、と言う方の感想も聞いてみたいものです。

あ、ちなみにぼく、餃子が嫌いなんです。

※オリジナルのパク・チャヌク監督版のポスターです。2003年公開。第57回カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリ授賞。ちなみに、この時の審査員長はタランティーノですから、さもありなん。
ポスターからしてやっぱりこっちのほうが凄まじい。