Gone Girl/アメリカ/2014年/148分
監督 デビッド・フィンチャー
原作 ギリアン・フリン
脚本 ギリアン・フリン
撮影 ジェフ・クローネンウェス
音楽 トレント・レズナー、アティカス・ロス
出演 ベン・アフレック、ロザムンド・パイク、ニール・パトリック・ハリス、タイラー・ペリー、キム・ディケンズ、キャリー・クーン
鑑賞後、開口一番「やっぱり女は怖いね!」などとぬるい感想を宣ったら、その底の浅さとは裏腹にニール・パトリック・ハリス演じるエイミーの元彼よろしくスッパリと深く喉元をかっ切られそうですね。
エイミーは至極真っ当なサイコパス、加えて「結婚」と言う関係性にフィーチャーして物語は(表面上)描かれており、世の男性(特に既婚の、あるいは交際相手のいる)からは上記の第一印象を漏れ聞くのも止むを得ず。
ぼくとしては、寧ろ「母娘」の関係性の業の深さに恐怖を見出しました。もちろん「アメイジング・エイミー」の話です。そして、何より厄介なのがこの映画全体を、そしてぼくたちを取り巻く人間の「善意」とでも呼ぶべきもの。
敬愛する漫画家、ジョージ秋山の今なお連載が続く不朽の名作「浮浪雲」に「人さまざま」って言うエピソードがあるんですね。曰く、「善人ばっかりだともめるんですよ 悪人ばっかりだともめねえんです」。登場人物はエイミーに限らず皆一様に、マスコミやそれを通して情報を得る人々を含め、その人なりの「正しさ」を装いあらゆる関係性のパワーゲームを押し進めて行きます。しかしその実、勝者も敗者もいない苦いゲーム。そこでは、すべてが偽りであり、また真実でもあります。
デビッド・フィンチャー監督、前作の「ドラゴン・タトゥーの女」はオープニングこそ腰が浮いておおっ!となったものの映画自体は肩透かし感がありまして、今作こそは!との期待に違わず傑作でした。ぼくがクロニクルに作品を追っている数少ない監督のひとり。マイ・フェイバリットの「セブン」「ファイト・クラブ」には及ばないものの存分に楽しませてくれました。
ベストセラーとなった原作のギリアン・フリンが脚本を取ったことで、展開の妙はもちろん台詞回しが大変に効いていますし、何よりロザムンド・パイクの演技は突き抜けてたまに笑っちゃうぐらいの渾身。ベン・アフレックのダサ格好良い具合もナイスです。ケツアゴ最高です。二本指でケツアゴを隠すアレは思わず真似しちゃう。
ともあれ、この映画で唯一同情しこの人マジで可哀想と思ったのはスクート・マクネイリー演じるエイミーの元クラスメイト、トミーでした。哀れ。