2016年/日本/111分
監督 小泉徳宏
原作 末次由紀
脚本 小泉徳宏
撮影 柳田裕男
音楽 横山克
主題歌 Perfume
出演 広瀬すず、野村周平、真剣佑、上白石萌音、矢本悠馬、森永悠希、松田美由紀、國村隼
原作は未読、アニメも未見、本作のモチーフとなる競技かるたについてもほぼ知識がない中、苦手意識の強い邦画の青春もの、しかも大人の事情が垣間見える昨今流行の前後編二部作か、と嫌な予感を抱きつつしぶしぶ、と言った体で劇場に足を運んだのですが、なかなかどうしてこれが大変に面白かったのです。鑑賞し終えて、思わず近くの席にいた女性に「お、面白かったですよね」と声をかけそうになりましたが寸でのところで踏みとどまりました。
序盤、かるた部創設に至る一連のドタバタ劇こそ「あちゃ、やっぱりこんな感じか」とその演出や俳優陣の演技に首をすくめてむず痒さを覚えたものの、ストーリーが展開するにつれググッと画面に引き込まれ、合宿を経ていざ都大会へと進み試合でのやりとりを追うにつれスクリーンに向かう眼差しも真剣になり、胸に熱いものを覚えるのでした。競技かるた部5人のそれぞれに背負うドラマが短いシークエンスの中できびきびと描かれており、テンポ良く抑揚をつけて物語が進んでいくのが見応えありましたね。
撮影も良かったと思います。構図がビシッと決まってたシーンがいくつもありましたし、試合の場面ではスローモーションとクローズショットを多用し外連味たっぷりに見せていました。また、この競技かるたの所作、アクションってのが絵になるんですよね。ドローン撮影も使って意欲的でしたし、全体を通して透明感があり尚且つ力強い画づくりで美しい魅力に溢れていました。
それにしても、あれですね。主役の綾瀬千早を演じた広瀬すずさん、非常に攻撃力の高い顔をしていらっしゃいますね。顔がつおいです。まっつぐです。あの顔面と突き刺さるような目力で「かるた部の部員になってくれませんか」と誘われたら光の速さで入部します。そして、日本の和に憧れる奏を演じる上白石萌音ちゃん。『舞子はレディ』以来お目にかかりますが大変に優れたコメディエンヌの素質を感じました。彼女には今後も良いキャリアを積んでいって欲しいものです。あと、机くんが出色でした。演じたのは森永悠希くん。彼の内に秘める感情がぽろぽろと顔を出し、ついには決壊するダムのように溢れ出すその様を抑えながらも熱く演じていました。ちなみに合宿のシーンで、すし桶からこぼれた米粒をさっと拾ってそっと指先に隠し持ちながら長回しのシーンをこなしていましたね。優しさが垣間見えました。
今作、“上の句”だけでも一応のカタルシスは得られますので単品として鑑賞してもオーケーでしょう。とは言え、“下の句”に向けた引きももちろんたっぷりとあり、ぼくとしては乗りかかった船以上に今作を楽しんだだけに、“下の句”の公開も待ち遠しいところとなりました。いずれにしろ、思いのほかキャストを含めた作り手の真摯さに胸を打たれた佳作と言うことで満足度の高い映画体験となった次第です。ホントはもうちょっといろいろと伝えたいんですけれど、うまく文章になりきらなかったのが心苦しい。誰かと観にいって感想をきゃっきゃと語り合いたい、そんな映画であります。
つおい(確信)。 |
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