2016年7月10日日曜日

日本で一番悪い奴ら


2016年/日本/135分
監督 白石和彌
原作 稲葉圭昭
脚本 池上純哉
撮影 今井孝博
音楽 安川午朗
出演 綾野剛、YOUNG DAIS、植野行雄、矢吹春奈、瀧内公美、ピエール瀧、中村獅童、白石糸

2013年のマイベストムービーに選出した『凶悪』の白石和彌監督、待望の最新作と言うことで大変楽しみにしておりました。今回は一体どんな作品を「ぶっこんで」くれるのか、浮足立って劇場に足を運んだところ、期待に違わず素晴らしい1本をぶっこんでいただき非常に満足しているところです。今作、『凶悪』と同様、いわゆるクライムムービーなのですが、より一層エンタメ色が強くなっており、笑いどころや泣きどころもふんだん。レイティングはR15+ながら、ぜひご覧いただきたいおススメの傑作となっております。それにしても、今年の邦画はハズレがないですね。

ストーリーのベースとなる「稲葉事件」は、梶本レイコ先生の大傑作BLコミック『コオリオニ』(コチラもBLの枠を超えた、しかしBLでなくては成しえないファンならずとも必読の1冊ですよ)で見知っており、今ちょうど原作となった稲葉圭昭その人による告白本『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』も読んでいるところ。いわゆる汚職警官ものなのですが、朴訥とした北海道の柔道青年が刑事となり、数々の手柄を立て功績を残すさなか、やがて悪事に手を染め果ては覚せい剤に溺れていくまでを時系列に昭和の映画さながら物語っていく運びとなっております。

まず、語られるべきは主演の綾野剛でしょう。第15回ニューヨーク・アジア映画祭でライジング・スター賞を受賞されたとの報が先日入ってきましたが、恐らくは今後、日本においても数々の賞を受賞すると思います。それに相応しい渾身の演技でした。押忍!で世渡りする世間知らずの朴訥とした柔道青年から、ピエール瀧演じる先輩刑事に手解きを受けてヤクザの世界に入り込んでいき、それこそヤクザさながらのルックスと態度でのし上がっていく悪徳ぶり、そして僻地へ飛ばされ覚せい剤に手を染めたその中毒患者っぷりまで演技のグラデーションが素晴らしかったです。初めて、覚せい剤を打った時のリアクションなんか鬼気迫る感じで思わず見入りましたね。あと、個人的には序盤のセックスシーンで後背位でガンガン腰を振りながらの決意表明、ってのが好きでした。

キャスティングもおしなべて良いですよね。ピエール瀧なんか『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のマシュー・マコノヒーを彷彿とさせる贅沢な使い方でしたし、YOUNG DAISとパキスタン人を演じたデニスの槙野行雄のコンビも笑いはもちろん悲哀を感じさせて良かった。中村獅童も真骨頂って感じの役どころです。ただひとつ、TKOの木下はいささかやりすぎかな。「あ、TKOの木下だ」と雑念が入っちゃって、ちょっとテンション下がりました。でも、俳優さんの名前は存じ上げませんが北海道警や税関などの脇を固める面々も非常にそれっぽさがありつつ味のあるお芝居をしていて、うまいなあと感じ入った次第です。

135分と言う長尺ですが、綾野剛の気合の入った演技と、俄かには信じがたい実話を基にしたストーリーがジェットコースターさながらに展開される語り口、そして、タイトル通り日本で一番悪い奴らは誰なのか(悪い「奴」ではありません。悪い「奴ら」なのです)、など飽きさせない作りで一気に観終わり、そして終わった後は何とも苦い味が口に残る、さすが白石和彌監督のぶっこみ具合が最高な出来となっておりますので、ぜひ劇場に足を運んでご覧ください!併せて『コオリオニ』も読んでね。覚せい剤はやめよう!もちろん、銃の不法所持も。

刑事の何たるかを教授中です。曰く、「ぐっちょんぐっちょんになりゃ良いんだよ」。

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