2016年7月15日金曜日

ペレ 伝説の誕生


Pele: Birth of a Legend/2016年/アメリカ/106分
監督 ジェフ・ジンバリスト、マイケル・ジンバリスト
脚本 ジェフ・ジンバリスト、マイケル・ジンバリスト
撮影 マシュー・リバティーク
音楽 A・R・ラフマーン
出演 ケビン・デ・パウラ、レオナルド・リマ・カルバーリョ、セウ・ジョルジ、マリアナ・ヌネシュ、ディエゴ・ボニータ、コルム・ミーニー、ビンセント・ドノフリオ

久方ぶりに観終わった後、爽快感の残る気持ちの良い感動をもたらしてくれた作品でした。ブラジルのスラム街で育つ貧しい少年ペレが、プロ入りをして活躍しながら、わずか17歳と言う年齢で1958年のワールドカップにおいてブラジルに優勝をもたらすまでを切り取ってドラマチックに描いた今作、まさにタイトル通り「伝説の誕生」に至るまでをクローズアップして構成されており、その按配加減が具合良く、非常にエモーショナルかつタイトな作品に仕上がっております。鑑賞後は、ジンガのリズムで道行く人をフェイントを交えた足さばきでかわしながら軽快な足取りで帰路につきました。

サッカーにはとんと疎いぼくでも、さすがに“サッカーの王様”ペレのことは見知ってはいました。とは言えその生い立ちはもちろん、物心ついた時にはすでに彼は引退しており、実際のプレーや活躍ぶり、その伝説に数々についてはほとんど存じあげませんでした。なので、そう言った意味で「へーそうだったんだ」と感心する部分は多々ありましたね。「ペレ」と言うのが愛称(もともとは蔑称)だったと言うことも初めて知った次第です。他にもサッカーにおいてなぜエースナンバーが背番号10番なのかとかですね。あと、ブラジル人にとってのサッカーの起源みたいな話も興味深かったです。カポエイラ→ジンガ→サッカーの流れだったんですね。

さながらミュージックビデオのように音楽に乗せてテンポ良く物語は進んでいき、106分の尺はあっという間です。原色の映えるブラジルの風景に光線の入れ具合が非常に良い画づくりも素敵でした。序盤のスラム街での洗濯物を丸めたボールを落とさないように蹴りあって遊ぶ場面は秀逸でしたし、マンゴーをサッカーボールに見立ててお父さんと練習するシークエンスも印象的でしたね。このお父さん役の俳優さんはすごく良かったです。お父さんも秀でたサッカー選手だったのですが、不幸な怪我により夢半ばで挫折し、スラム街でのトイレ掃除の仕事に身をやつしながらも、やはりサッカーが忘れられず、その才能を十二分に受け継いだ息子に夢を託す。まさに、このお父さんなしではペレの伝説は誕生しなかったわけですね。

この映画を観た後、ネットでペレについて調べてみたり、Youtubeで彼の往年のプレーを観たりしているうちに関連したサッカーのスーパープレー集なんかの動画を見入ってしまい結構な時間が過ぎていました。シンプルなスポーツだけに奥深いと言うか、今作でもヨーロッパスタイルに対するジンガサッカーみたいな描かれ方をされていましたけれども、こうしてその歴史を紐解いていくと面白いものですね。そして、やはりチームプレーとは言え圧倒した個の力と言うのは存在するようで、その象徴がペレと言うことなのでしょう。

ところで、個人的に今作でおいしかったところがひとつありまして、それはブラジル代表チームを率いるフェオラ監督を演じたビンセント・ドノフリオなのですね。ご存知、『フルメタル・ジャケット』の“微笑みデブ”なのですが、大好きなんですよね、この俳優さん。ちょくちょく良い感じの脇役で出てくるのでその度に、おおっ!となってしまいます。今作でもそのチャームをいかんなく発揮しておりまして、ファッションもすごく可愛いんですよ。しかも、今回は役柄も良い!途中で殺されたりしません。ヨーロッパスタイルのサッカー推しなのですが、やがてジンガサッカーを認め、美しいブラジルサッカーを魅せるんや!とロッカールームで熱く語る、情熱を内に秘めた燃える男を演じておりますのでファンの方は必見です!

ご本人さんもカメオ出演しております。その登場シーンで館内は笑いに包まれました。ぼくも思わず笑ってしまった。

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