2016年2月19日金曜日

オデッセイ


The Martian/2015年/アメリカ/142分
監督 リドリー・スコット
原作 アンディ・ウィアー
脚本 ドリュー・ゴダード
撮影 ダリウス・ウォルスキー
音楽 ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
出演 マット・デイモン、ジェシカ・チャスティン、クリステン・ウィグ、ジェフ・ダニエルズ、マイケル・ペーニャ、ショーン・ビーン、ケイト・マーラ、セバスチャン・スタン、アクセル・ヘニー、キウェテル・イジョフォー

上映時間の都合で、2D字幕版での鑑賞となりました。ところで、ぼくはじゃがいもが苦手なんですね。あのもそっとした食感と素っ気ない味がどうにも面白くなくて、カレーやシチューに入っていたらぺっぺっと除けちゃいます(例外的に某ハンバーガーチェーン店のフライドポテトと母親の作るポテトサラダは好き)し、定番の肉じゃがなんてもってのほかです。コロッケもノーサンキューですね。

さて、そんなじゃがいもをせっせと栽培して、独り残された火星で生き延びるマット・デイモンを老いてますます盛んなリドリー・スコット監督がフィルムに収めた今作、前評判や予告編を耳目にしており期待を膨らませて鑑賞に臨んだのですが…うーん、と首を捻りながら劇場を後にする結果となってしまいました。

マーク・ウォルバーグ…じゃないマット・デイモン演じる主人公のマーク・ワトニーが不慮のアクシデントにより火星に取り残され、そこからサバイバルが始まる序盤こそぐぐっと引き込まれて「これは、面白くなりそうだ」と浮き足立ったものの、中盤から終盤にかけては142分の長尺も手伝って、若干ウトウトしそうになったり。お定まりのエンディングに向かってバッサバッサと収束していく様をただぼんやりと眺めているだけ、と言った具合でした。

NASAの管制室でスタッフが「Yeah!」ってSF宇宙物あるあるだと思うんですけれど、これって1本の映画に対して入れたとしてもせいぜい1~2シーンまでじゃないですか?はっきりと覚えてないのですが、劇中4~5回くらい「Yeah!」するんですよ。だんだんと興醒めしちゃってですね。あと、リアリティとはまた違うんでしょうけれど、火星や宇宙船内、いわゆる宇宙空間での音響や重力、無重力の描写やそんなのビニールとガムテープでオーケーなの?とかがぼくの持ってるイメージとズレていて気になっちゃいました。

主人公がスーパーポジティブ、出てくる人間は皆イイ人って言う按配は良かったですし、お話自体は面白いと思うので原作小説をぜひ読んでみたいですね。映画もアメリカっぽいジョークの言い回しが多用されていて非常に英語の勉強になりました。SF宇宙物って言うと悲壮でシリアスな感じになりがちですが、割にあっけらかんとしたコメディに仕上げていたのは新しくて評価したいところです。

個人的にはマイケル・ペーニャが出演していたのが嬉しかったですね。お気に入りの役者さんです。彼とジョン・レグイザモのハリウッドでのポジションの奪い合いがぼくの最近の懸念事項です。直近に鑑賞した『エージェント・ウルトラ』ではジョン・レグイザモが最高に良い味を出していました。

それにしてもよくよく考えてみればリドリー・スコット監督も78歳でまだ新境地とも言える作品を残すパワーがあるってのは凄いですよね。しかも、興行的にも成功を収めているわけですし。今作、ぼくはちょっとミスマッチでしたがまだまだ素晴らしいものを世に送り出してくれると期待しております。『プロメテウス』の続編が楽しみ!

こちらは『アントマン』のマイケル・ペーニャ。シリアス、コメディどちらも器用にこなします。

2016年2月12日金曜日

さらば あぶない刑事


2016年/日本/118分
監督 村川透
脚本 柏原寛司
撮影 仙元誠三
音楽 安部潤
出演 舘ひろし、柴田恭兵、浅野温子、仲村トオル、吉川晃司、菜々緒、木の実ナナ、小林捻侍、ベンガル、山西道広、夕輝壽太

テレビシリーズの『あぶない刑事』は世代的に、どストライクですね。ただ、当時の放送をリアルタイムに追ってはおらず、夕方の再放送で良く観ていた記憶があります。劇場版も映画館に足を運んで鑑賞したことはなく、こちらもテレビでちらちらと観た程度。つまり、熱心なファンではないものの、その年代の通過儀礼として“あぶ刑事”に慣れ親しんではいますよ、と言った感じでしょうか。定番の「関係ないね」や「行くぜ!ユージ!」「オーケー!タカ!」も一通りこなしましたしね。

そういう意味で今作、大変に懐かし面白かった、と言うのが率直な感想です。客層も中年層が多く、特にエンドロールが流れ出した時には後方の席の女性から「あ、懐かし…」との声が漏れ聴こえ、誰一人として席を立つ者はいない中、甘く切ない感情に浸る空気が館内を包み込み、非常に一体感がありました。

もちろん、一つのジャンルムービー、それも30年の時を経て熟成され、作り込まれた“あぶない刑事”の世界が世に送り出す“最後の作品”と言う極めて限定された括弧付きの懐かし面白さであり、万人にレコメンドはできませんし、あまたの作品と同列に評して論じるのもナンセンスなことです。でも、今の時代にこういうハチャメチャな勧善懲悪、ご都合主義、「ど」が付く程の昭和テイストで、振り切った格好良さを究めた映画がバーンとあっても良いんじゃないかとも思いました。
「痛い」とか「寒い」とか「ありえない」とか言ってないでタカとユージのチャンバラを楽しめよ!と。

ちなみに、随所に小ネタやギャグが散りばめられているのですが、ぼくのお気に入りは片桐竜次演じる闘竜会会長の「わわっ!足だ!…なんだ、腕か」ってやつです。

今や円熟期を迎えた舘ひろし、柴田恭兵をはじめ仲村トオル、浅野温子とキャスト陣のやりきった感が好ましかったですね。しっかりと役柄を演じ切っている、そこが魅力的でした。敵役の吉川晃司もシブく、この世界観にマッチしてて良かったですよ。ひとつ、残念だったのは菜々緒の扱い。ぼくが彼女の出演する作品を目にすると、高確率で死体になってるんですけれど、完全にツールとしての役割しか果たしてなかったですね。マッチョイズムとタカ&ユージのホモソーシャリズムの犠牲になっちゃってました。このエピソードは別にハッピーエンドでも良かったと思うんですけれども、そうするとラストのシークエンスがややこしいことになっちゃうんですよね。

それで、この映画の最大の見所はやはりこのラストのシークエンスからエンドロールの流れにあるわけです。もうすでに若干していますが、このくだりを詳しく語っていくと激しくネタバレになるので避けますが、とにかく最高なんですよ!少しでも“あぶ刑事”をかじったことのある人ならば、このパートとエンドロールだけでも充分に劇場に足を運んで鑑賞する価値アリです。最後に一言。R.I.P.中条静夫。そして、さらば!あぶない刑事!

さよなら、タカ&ユージ!さらば、あぶない刑事!