2014年12月28日日曜日

ゴーン・ガール


Gone Girl/アメリカ/2014年/148分
監督 デビッド・フィンチャー
原作 ギリアン・フリン
脚本 ギリアン・フリン
撮影 ジェフ・クローネンウェス
音楽 トレント・レズナー、アティカス・ロス
出演 ベン・アフレック、ロザムンド・パイク、ニール・パトリック・ハリス、タイラー・ペリー、キム・ディケンズ、キャリー・クーン

鑑賞後、開口一番「やっぱり女は怖いね!」などとぬるい感想を宣ったら、その底の浅さとは裏腹にニール・パトリック・ハリス演じるエイミーの元彼よろしくスッパリと深く喉元をかっ切られそうですね。

エイミーは至極真っ当なサイコパス、加えて「結婚」と言う関係性にフィーチャーして物語は(表面上)描かれており、世の男性(特に既婚の、あるいは交際相手のいる)からは上記の第一印象を漏れ聞くのも止むを得ず。

ぼくとしては、寧ろ「母娘」の関係性の業の深さに恐怖を見出しました。もちろん「アメイジング・エイミー」の話です。そして、何より厄介なのがこの映画全体を、そしてぼくたちを取り巻く人間の「善意」とでも呼ぶべきもの。

敬愛する漫画家、ジョージ秋山の今なお連載が続く不朽の名作「浮浪雲」に「人さまざま」って言うエピソードがあるんですね。曰く、「善人ばっかりだともめるんですよ 悪人ばっかりだともめねえんです」。登場人物はエイミーに限らず皆一様に、マスコミやそれを通して情報を得る人々を含め、その人なりの「正しさ」を装いあらゆる関係性のパワーゲームを押し進めて行きます。しかしその実、勝者も敗者もいない苦いゲーム。そこでは、すべてが偽りであり、また真実でもあります。

デビッド・フィンチャー監督、前作の「ドラゴン・タトゥーの女」はオープニングこそ腰が浮いておおっ!となったものの映画自体は肩透かし感がありまして、今作こそは!との期待に違わず傑作でした。ぼくがクロニクルに作品を追っている数少ない監督のひとり。マイ・フェイバリットの「セブン」「ファイト・クラブ」には及ばないものの存分に楽しませてくれました。

ベストセラーとなった原作のギリアン・フリンが脚本を取ったことで、展開の妙はもちろん台詞回しが大変に効いていますし、何よりロザムンド・パイクの演技は突き抜けてたまに笑っちゃうぐらいの渾身。ベン・アフレックのダサ格好良い具合もナイスです。ケツアゴ最高です。二本指でケツアゴを隠すアレは思わず真似しちゃう。

ともあれ、この映画で唯一同情しこの人マジで可哀想と思ったのはスクート・マクネイリー演じるエイミーの元クラスメイト、トミーでした。哀れ。

2014年12月11日木曜日

インターステラー


Interstellar/2014年/アメリカ/169分
監督 クリストファー・ノーラン
脚本 ジョナサン・ノーラン、クリストファー・ノーラン
撮影 ホイテ・バン・ホイテマ
音楽 ハンス・ジマー
出演 マシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイ、ジェシカ・チャスティン、マイケル・ケイン、ジョン・リスゴー、マッケンジー・フォイ、ティモシー・シャラメット、ケイシー・アフレック、マット・デイモン

前半、宇宙へと旅立つまでの大胆な省略話法と終盤にかけての超展開に169分と言う長尺をさほど感じることなく、サイエンスフィクションの世界に疎いぼくでも細かい部分は頭に疑問符が浮かびながらではありましたが楽しんで鑑賞できました。

親子愛からひいては男女の愛、そして人類愛と言う普遍的な愛についての物語に落とし込んであって、クリストファー・ノーラン監督らしくいささか大仰な演出でグイグイと進んでいく感じでしたが、個人的にこの「父と娘」と言うパターンには滅法弱いのでたいそう涙腺が刺激された次第です。

「ウラシマ効果」って設定も大好物でして、何かセツナオモシロイ…って感じで心揺さぶられるのです。

グラビティ、重力がキーワードになる今作、どうしても昨年末に鑑賞した「ゼロ・グラビティ」が思い出され、視覚効果や音楽はこちらの方がフレッシュな驚きがあって好きだったりするのですが、お馴染みハンス・ジマーの音楽もいささか煩かったものの、これまた良かったです。宇宙空間で無音になるシーンとのギャップが盛り上げてくれますよね。

脚本も素晴らしいと思います。鑑賞中、どんな着地点にこの壮大な物語を運んでいくのかハラハラとしていましたが、淡いながらも確かに光る希望を見出せるラストで腑に落ちました。

そして、この壮大な物語を下支えするのが俳優陣の渾身の演技ですよね。マシュー・マコノヒー、贔屓目もありますが素晴らしかった。特に宇宙空間に放り出されて五次元空間へと落ちて行くあの息遣いと足下から股間にかけてすーっとする感じ、凄かったです。もちろん、独特の喋り方と熱量で良き父っ振り、また冒険者としての男振りも最高でした。娘、マーフィーの少女時代を演じたマッケンジー・フォイも良かったですね。強い眼差しで、後の成長に繋がる説得力のある演技でした。

こう言う映画には必須のサブキャラ、TARSとCASEも可愛いかったし、泣ける役回りで最高でした!

2014年12月6日土曜日

西遊記~はじまりのはじまり~


西遊 降魔篇/2013年/中国/110分
監督 チャウ・シンチー
共同監督 デレク・クォック
脚本 チャウ・シンチー、デレク・クォック 他
撮影 チョイ・サンフェイ
音楽 レイモンド・ウォン
出演 スー・チー、ウェン・ジャン、ホアン・ボー、ショウ・ルオ

チャウ・シンチー監督作品は以前にDVDで「少林サッカー」を鑑賞したのみ。今作を観て改めて感じたのですが、この人のウェットな演出や、いささかグロテスクなユーモアがどうも肌に合わず、非常に娯楽性に富んだ作品だと評価する一方、苦手意識が消えませんでした。

ご存知、西遊記のエピソードゼロと言うことでアイデア溢れ、妖怪ハンター達のキャラクターも面白いのですが(空虚王子がお気に入りでした)、玄奘三蔵が旅立つまで市井の人から身近な人まで随分と人が死んじゃってなんだか重い話だな…と。あと、あんなにホモセクシャルをバカにするのはポリティカルコレクト的にどうなんだと思ったりして、鑑賞中、雑音が多かったですね。

頼みの綱の孫悟空も人間の姿をしていた時はその人物像を含めて笑える感じで良かったのですが、猿になってからは造形的にぜんぜん格好良くなくて、堺正章にシビれてその辺の棒っきれを振り回し、「如意棒!」とかやってた世代としてはちょっとがっかりでした。
沙悟浄や猪八戒のルックスもイマイチ(西田敏行と岸部シローに思い入れが強すぎるのかも知れません)。

チャウ・シンチー監督のサービス精神旺盛な持ち味で様々なファクターをたっぷりと詰め込んだ今作、詰め込みすぎか間延び感。もうちょっとテンポ良く運んでくれると楽しめたかもしれませんが、ぼくには上映時間の110分がいささか長く感じられました。

ヒロインを演じたスー・チーは石原さとみと綾瀬はるかを足して二で割ったところにスパイスを振りかけたようで大変に可愛く魅力たっぷりでしたよ。「トランス・ポーター」のあの人か!と後で知り、今後もスクリーンで観たい女優さんの一人です。