2015年9月26日土曜日

進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド


2015年/日本/88分
監督 樋口正嗣
原作 諌山剣
脚本 渡辺雄介、町山智浩
撮影 江原祥二
音楽 鷺巣詩郎
主題歌 SEKAI NO OWARI
出演 三浦春馬、長谷川博己、水原希子、本郷奏多、三浦貴大、桜庭ななみ、松尾諭、渡部秀、水崎綾女、武田梨奈、石原さとみ、ピエール瀧、國村隼

乗りかかった船と言うか、まんまと後編を鑑賞せざるを得ない形になってしまい、無駄にIMAXエグゼクティブシートで、前編がアレでしたゆえ思いっきしハードルを下げて臨みました。ちなみに前編のアレな感想はこちらです。

今作、サブタイトルは“エンド オブ ザ ワールド”であり、それに対してキャッチコピーが「世界はまだ、終わらない。」でしたね。どっちやねん、とポスターに突っ込みを入れるところからすでに戦いは始まっていました。前編同様にこの後編に関しても酷評を耳目にしており、とにかく皆さん劇場マナーだけは守ってくれ!そして、88分の上映時間を居眠りすることなく過ごせますように!と言う切なる願いで胸が一杯の中、やっとの思いでエンドロールが流れるとともに席を立ってしまった為、後で調べたところによると本来のエンディングを見逃してしまったようです。まあ、見逃してもさしたる影響はなかったようですけれども。

まず、前作と違い楽しめた点をいくつか。一つはIMAX様々で音響が素晴らしかったこと。迫力がありましたね。そこに進撃する巨人VS鎧の巨人や超大型巨人のビジュアルが相まってある種のカタルシスを得ることはできました。

二つ目は長谷川博己演じるキリシマと我が石原さとみ演じるハンジの出番が多くこの達者な演技(と、石原さとみ)を存分に体感できたこと。両名ともいわゆる「痛い」調子の演出と台詞回し、過剰な演技でここは好みの分かれるところでしょうが、ぼくの中で最近頓に株が上がりつつある長谷川博己のオーバーアクティングとやはり石原さとみをこよなく愛する42歳独身のおっさんの血が騒いだか拍手喝采と言ったところでした。

三浦春馬君を筆頭に演者さん達は非常に一生懸命頑張っていたと思います。もし彼らに分が悪いところがあるとすればそれは明らかに演出の所為であり、その演技力を貶めるものではないと言うのがぼくの感想です。もちろんテクニカルな演技力に差がある(例えば國村準の達者ぶり)のは否めませんが、俳優陣の真摯さは十二分に伝わってきました。話は変わりますが、エレン君は前編でもそうでしたがテンパると叫ぶ癖があるみたいですね。適切な病院に連れて行ったら何らかの診断名が付きそうです。

とにかく、やはり脚本と演出がひどい代物だと言わざるを得ません。そもそも前後編を分けたためにオープニングでのダイジェストや回想シーンを多用する今作は純粋な本編の上映時間も短く一本の映画として成り立ちうるのかと言う疑問も残りますし、人物像の描き方、とくにキリシマのそれはこちらがついていけないほどのブレ具合。あの変な部屋でのシャンパンや白いシャツにいつ着替えたの!などの一連の出来事や、ラストへ向かって無理やり収束させていこうとするにキャラクターの変節も厭わない芯の通っていなさ、それぞれの登場人物の元来のモチベーションはどこいっちゃったんだろう、あとミカサもうちょっと喋れやとか。

前編に関してはまだ突っ込む余裕もあったのですが、後編に至っては頭に疑問符が渦巻き物語の整合性を捉えきれぬまま皆が皆一様に叫んでは「と、とにかくこの映画を終わらせなければ!」と言う訳の分からない使命感で動いているため、観ているこちらはぽかーんとしてしまう状態です。

やはり、原作ありきの物語、それも大ヒットして尚且つ連載中のコミックの映画化と言う案件は誰が見てもそれ相当の覚悟とリスペクト、もっと言えば愛がないと火傷することは間違いなしです。前編の感想でも述べましたがこれはもうバジェット云々の問題ではありません。そう言った意味では、一体誰がこの『進撃の巨人』実写化で得をしたでしょう。答えは一つです。そう、こよなく愛する石原さとみの吹っ切れた演技をIMAXで堪能できた、ぼくです。

フォーッ!

2015年9月19日土曜日

カルフォルニア・ダウン


San Andreas/2015年/アメリカ/114分
監督 ブラッド・ペイトン
脚本 カールトン・キューズ
撮影 スティーブ・イェドリン
音楽 アンドリュー・ロッキングトン
出演 ドウェイン・ジョンソン、カーラ・グギーノ、アレクサンドラ・ダダリオ、ポール・ジアマッティ

「見てみたい 一度でいいから 見てみたい ロデオボーイで 揺れるおっぱい」
以前にぼくが歌人の枡野浩一著『ショートソング』の読書感想として詠んだ短歌です。地震→揺れる→おっぱい、と言う実にくだらない連想ゲームをまさにこの映画で体現した娘役のブレイクを演じたアレクサンドラ・ダダリオについてまずは言及しないわけにはいかないでしょう。ぼくは初見の女優さんだったのですが、その美しい顔立ちと胸元を強調するようなタンクトップ(序盤にビキニ姿もあり)のもとで揺れるおっぱいは計測不能な規模のマグニチュードを叩き出しています。ちなみにこの揺れは予知可能です。あ、くるな…と思ったらきますので。そんなわけで週頭の月曜日に今作を鑑賞し、週末の土曜日にこのブログを記しているのですが、鑑賞後にGoogleですぐさま検索した「アレクサンドラ・ダダリオ 画像」のタブは開きっぱなし、そして映画の記憶は彼女(のおっぱい)のことで塗れており、作品そのものに大した感想は残っていないというのが正直なところです。

お時間があればぜひ「アレクサンドラ・ダダリオ 画像」で検索してみてください
ぼくは二十年前の阪神淡路大震災を被災しており、フラッシュバック的なことがあったりするのかな、といささかドキドキしながら臨みましたが、ぜんぜんそんなことはなくあくまで映画館と言うセーフティーな場所からスクリーン越しにディザスターエンターテインメントを迫力の映像と共に楽しむと言った体でしたし、(津波のことは分かりませんが)地震による建物の倒壊などの被害ががいくらなんでも現実味がなさすぎるボロボロ具合だったので、ああこれはそう言う映画なんだと自分の中でフィクションのレベルをぐっと上げて「おお、すげえ!」とドウェイン一家のサバイバルを興奮しながら見守りました。

ディザスタームービーの傑作と言うと、ぼくの中では昨年公開の『イントゥー・ザ・ストーム』が思い起こされますが、それに比べるとお話の方はすかすかで突っ込みどころ満載。ザ・ロック様の気持ち良いまでの職務放棄っぷりと、とにかく俺の嫁!俺の娘!が助かればそれで良いんじゃい!と言う奮闘の陰で数限りなく犠牲になっていく一般市民たち。何となく星条旗を映しこんで父権の復活!強いアメリカ!ファミリア!みたいなところに落とし込んでいくベタなエンディング。しかしですね、そんなことはどうでも良いんじゃん、と言うところがこの映画の肝ではないでしょうか。

ドウェイン・ジョンソンの鋼の肉体と無双の獅子奮迅、カーラ・グギーノのここ一番でのホバークラフトによるぶち込み、アレクサンドラ・ダダリオ(のおっぱい)の健気な奮闘ぶり、そしてこの一家を避けて落ちる割れたガラスや瓦礫の山、そんなこんなとやっぱりハリウッドすげえなあと感嘆する臨場感あふれる視覚効果で描かれる地震災害のあれこれ。ジェットコースターがその歴史の中でもっとスリルを!もっと興奮を!とゲストの要望に応えるがごとく進化していった様相と同様です。絶対的な安全圏の中で、現実に起こりうるかもしれないスペクタクルを味わいたいという人間の欲求を存分に満たしてくれる作品であることは間違いないでしょう。映像に関して言えば前述の『イントゥ・ザ・ストーム』と肩を並べる、あるいは超えてくる勢いの出来映えだと思います。

書いているうちに徐々に今作の記憶が甦ってきましたが、やはり不謹慎ながら“地震で揺れるおっぱい”と言うフレーズの持つ破壊力を抑えきれず、それでもご贔屓のポール・ジアマッティがいつも通り大変に可愛らしくて抱きしめたくなった旨を記して筆を置きたいと思います。

なんで~こんなにかわいいのか~よ~。

2015年9月11日金曜日

ナイトクローラー


Nightcrawler/2014年/アメリカ/118分
監督 ダン・ギルロイ
脚本 ダン・ギルロイ
撮影 ロバート・エルスウィット
音楽 ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演 ジェイク・ギレンホール、レネ・ルッソ、リズ・アーメッド、ビル・パクストン

ムービーウォッチメンで取り上げられるに先駆けて、友人(そこそこクズ)から「すごいクズが主人公の面白い映画がある」とレコメンドされ自称‘クズの元締め’であり、またクズ人間大好きのぼくとしてはこれは観ねばならん!と劇場公開間もなく足を運んでの鑑賞でした。

いや、確かにこれは面白かった。そして、この映画の主人公であるルイス・ブルームこそ紛れもなく人間のクズ。そこに描かれるクズっぷりにより嫌な気分になるどころか、いっそ清々しい程であり、ある種の爽快感をもって劇場を後にした次第です。

まず触れなければならないのは主演のジェイク・ギレンホールの徹底したメソッド演技でしょう。役作りのために体重を9kg落としたとかで、痩せこけた顔つきにぎょろぎょろと目を剥いて、ネット上で拾い漁った自己啓発のプラクティカルなフレーズを交え能弁に語り、とにかく自己主張が強い強い。そして、目的の達成の為なら手段を選ばず、モラルなどお構いなしに突き進んでいくルイス・ブルームと言う人間をまさに「役にのめり込んで」演じ切っています。

メキシコ料理のレストランでレネ・ルッソと対峙するシーンが良かったです。めちゃんこストライク・ゾーン広いですね!と言った感想はもとより、まったく深みのない上滑りなボキャブラリーを駆使して一点集中突破の揚げ足取りで相手の弱みを突きまくり、ペラペラとまくし立てるその様はまさに「ああ言えば上祐」(懐かしい)状態です。

名人芸、上祐史浩氏のフリップ投げをご覧ください。

これが長編監督デビューとなる脚本も兼ねたダン・ギルロイも冴えています。盗品を売りさばいて口を糊していたこのクズ男に訪れる転機と成り上がり、それに巻き込まれていく人々の顛末を、ここからここまでって感じで巧く切り取って描いており、なんだか納得させられちゃうパワーがあります。撮影もスタイリッシュで良いですね。撮影監督のロバート・エルスウィット、さすが良い仕事をしています。夜のロサンゼルスをカメラ片手に徘徊する“ナイトクローラー”感がばっちりと醸し出されていて映像に説得力があります。

ラストの落とし方も見事。なんだかんだ言って勤労意欲だけは人一倍の主人公。そこにポエティックな自己啓発のキラーフレーズを乗っければあら不思議、ブラック企業の出来上がりです。こんな上司の下では絶対に働きたくありませんが、お前の仕事ぶりはおもしろいから傍から覗かせてくれと言うところでしょうか。

ところで、ショッキングな映像ってモザイク掛かっていた方がより生々しく見えませんか。ぼくが別の機会にモザイクを見すぎているせいかもしれませんが。

“良い仕事”の為なら労を惜しみません。見習いたいものです。

2015年9月4日金曜日

ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション


Mission:Impossible-Rogue Nation/2015年/アメリカ/132分
監督 クリストファー・マッカリー
脚本 クリストファー・マッカリー
撮影 ロバート・エルスウィット
音楽 ジョー・クレイマー
出演 トム・クルーズ、ジェレミー・レナー、サイモン・ペッグ、レベッカ・ファーガソン、ビング・レイムス、ショーン・ハリス、アレック・ボールドウィン、サイモン・マクバーニー

上映からものの数分もしないうちに突如尿意に襲われ、しかも両隣をカップルに挟まれたど真ん中の席に陣取っていたため身動きもとれず、「こ…このままあと二時間強、この尿意を我慢しなければいけないのか!」と言うまさに遂行不可能な任務が課せられた中、劇中同様ハラハラドキドキのスリルあふれる鑑賞体験でした。ちなみにぼくのイーサン・ハント(膀胱)は期待に違わずこのインポッシブルなミッションをエンドロールが流れると同時にトイレにダッシュという力技でクリアしました

それはさておき感想です。鑑賞前からぼくのTwitterのTL上ではすこぶる評判が高くシリーズ最高傑作との評もありました。このシリーズに関してはリアルタイムで全作を鑑賞していますし、ハードル高めで臨みましたが、…うん、普通に面白かったです。しかし、ぼくの中では敬愛するジョン・ウー監督の『M:I2 ミッション:インポッシブル2』こそが至高。それを超えてくる程の出来ではありませんでしたね。

なんか、『スパイ大作戦』って言うより『007』って感じだな、と言うのが率直なところ。前作までのシリーズと比較して『ミッション:インポッシブル』らしさが薄まっていたような。でも、冒頭からラストまで見せ場はきっちり押さえてあって、尿意はさておきハラハラドキドキシチュエーションは健在。見所の水中でディスクを差し替えるシークエンスは観ているこちらも息苦しくなりました。

今作、一番痺れたのはカーチェイスからバイクチェイスへと流れる一連のアクション。ぼくは割にカーチェイスって退屈で眠くなっちゃう方なんですが、このライド感は凄かったです。助手席のサイモン・ペッグがギャーギャー騒ぐから余計に臨場感がある。「シートベルトしてるか!」「今さら聞くのかよ!」のやりとりは最高ですよね。このサイモン・ペッグが相変わらずチャーミングで彼が今作のエッセンスとして非常に重要な役割を果たしたのは言を俟たないところでしょう。ベンジーで一本スピンオフを作ってもぜんぜんイケると思いますよ。

役者陣のポジショニングが良かったと思います。ジェレミー・レナーしかりアレック・ボールドウィンしかり、皆収まるところに収まってアクションし台詞をキメていました。登場人物の出入りが良いっちゅうか、バランスのとれた脚本で巧い着地点に落とし込んだ仕上がりになっています。悪役のボス、ソロモン・レーンを演じたショーン・ハリス、変な声でしたけど彼も魅力的でしたね。レコードショップでイーサン・ハントが捕獲されるくだりと最後に防弾ガラスのケースにソロモン・レーンが捉えられるシーンの対比も憎い演出です。

ところで、レコードショップであっけなく殺されてしまう女優さん、誰なんでしょう。すごく可愛くてメイン・キャラを張っても良いくらいの魅力がありましたけれど。今後、要チェックかもしれません。

レコード店の店員、調べてみたらこの女性でした。Hermione Corfieldさん。べっぴんさんですね。