2014年3月21日金曜日

ロボコップ



RoboCop/2014年/アメリカ/117分
監督 ジョゼ・パジーリャ
脚本 ジョッシュ・ゼッツマー、ニック・シェンク
撮影 ルラ・カルバーリョ
音楽 ペドロ・ブロンフマン
出演 ジョエル・キナマン、ゲイリー・オールドマン、マイケル・キートン、アビー・コーニッシュ、ジャッキー・アール・ヘイリー、サミュエル・L・ジャクソン

やくざ映画を観た後、こう肩をいからせて大股歩きになってみたり、幼き頃、ジャッキー・チェンの映画を観てなんだか強くなったような気がしてカンフーの真似事をしたりってあるじゃないですか。
やっぱり「ロボコップ」を観た後は、動きがぎこちなくロボット的になりますよね。角を曲がる時に首が先に動いて体が後からついてくる、みたいな。

ポール・バーホーベン監督のオリジナル版は当時劇場で鑑賞し、その暴力的でグロテスクな描写に衝撃を受け、しかしながらその造形の格好良さにシビれたのとパントマイム的な動きの面白さに刺激を覚えて、随分と興奮した記憶があります。ロボコップごっこが流行ったような…学校とかで。吹越満のロボコップ演芸なんてのもありましたね。

こちらをご覧ください。


さて、今回のリメイク(リブート)版ですが、ヒューマンドラマに仕上がってましたね。レイティングの関係もあるのでしょうか、どぎつい描写もなかったです。ブラックユーモアな感じもなし。まあ、オリジナルがカルト的人気を誇る名作だけに、こちらもそんなに期待値を上げて観にいったわけでもないので、これはこれで楽しめました。

中でも白眉だったのが、ロボコップとなったアレックス・マーフィーが初めて妻と息子に対面するために我が家を訪れるシーン最先端の医療とテクノロジーを集結させて完成されたそのサイボーグがウィーン、ガシャ、ウィーン、ガシャと歩み寄りおもむろに手を伸ばして「ピンポーン」とチャイムを押す。その一連の流れでもう堪え切れなくなり思わず静まる劇場で吹き出してしまいましたよ。
あれ、ぼくが息子の立場だったらあの姿形でおとうさんが帰ってきたらもう抱腹絶倒ですね。感動の対面シーンだけに不謹慎さが相まって笑いが止まりませんでした。

そして、今作でのロボコップの黒を基調としたスタイリッシュな造形、これは賛否が分かれるところでしょうがぼくは割に好きでした。流線型のフォルムで、こちらも黒く洗練されたデザインのバイクに跨って疾走するところなんかは新しいヒーローの登場を予感させて、格好良いじゃん!と思いましたね。もちろん、あのメタリックシルバーの無骨な感じも、これぞ、ロボコップ!って感じがするので捨てがたいですけれど。

姿形と言えば、アレックス・マーフィーのボディのパーツをすべて取り外して、わずかに残った生身の部分だけのあのビジュアルは大変にショッキングでした。
「ほとんど残ってないじゃないか!」と言うアレックスの叫びは悲痛でしたね。これと言い、最後の戦いで片腕を失いぼろぼろの状態で立ち向かう姿と言い、形容しがたいカタワ感(大変申し訳ありません、不適切ですがどうしてもこの表現になってしまうのです)というのがロボコップの真骨頂ではないでしょうか。

その意味では、肝心の脚本や演出、脇を固める登場人物が今一つ魅力不足だったなあ、と言う感は否めません。監督は名作の誉れが高い「エリート・スクワッド」シリーズのジョゼ・パジーリャだけあって銃撃戦はさすがの迫力、敵役のボス、ヴァロンのアジトに乗り込んでのまさにFPSまんまのガンファイトのシークエンスはナイトスコープやサーモスコープなどの映像の切り替えも騒がしく見応えがありました。しかし、ドラマをあんまりエモーショナルに味付けしないのがこだわりなのか、淡々とした進行の印象を受けました。もうちょっとけれんみたっぷりな演出やお芝居が随所にあっても良かったんじゃないでしょうか。

演じる役者陣、お久しぶりのマイケル・キートンはとにかく自社の製品を米国で売りたい一心なのはわかりますけれど、その割には言動がぶれる印象でしたし、ゲイリー・オールドマンは相変わらずの好演で大変に良かったのですがこの人の軸足もちょっと良く分からない。マッドサイエンティストなのは間違いないんですけれど、なんか良い人って言う。これ、ゲイリー・オールドマンじゃなかったら(彼の演技力がなかったら)微妙な人物像に見えたと思います。
ロボットに戦闘を教え込む教官役、見覚えあるなあと思ったら、ジャッキー・アール・ヘイリーですね。ロールシャッハ!彼なんか憎々しくて非常にチャーミングな役柄だったんですけれど充分に活かし切れていないと言うか、最期も背後からアレックスの相棒にパンと撃たれて終わりだし、もうちょっと見せ場が欲しかった。

サミュエル・L・ジャクソンはオープニングとエンディングに華を添え、狂言回し的なおいしい役どころで、この人の台詞回しは本当にうまいし、ついつい魅入っちゃうんですけれど、ハリウッドで最も美しく「Mother Fucker」を発音し巧みに操ると評判の彼のそれが今回はピー音でかき消されてしまったのがなんとも残念でした。

あ、あと音楽良かったです。