2014年9月6日土曜日

イントゥ・ザ・ストーム


Into the Storm/2014年/アメリカ/89分
監督 スティーブン・クォーレ
脚本 ジョン・スウェットナム
撮影 ブライアン・ピアソン
音楽 ブライアン・タイラー
出演 リチャード・アーミテージ、サラ・ウェイン・キャリーズ、マット・ウォルシュ、アリシア・デブナム・ケアリー、アーレン・エスカーペタ、マックス・ディーコン

鑑賞中、結構な頻度で座席がぶるぶると揺れまして、すわ!ギミックか!と驚いていたのですが、どうやら劇場がターミナル駅の近くにあるため電車が通るたびに振動が伝わっていたようです。あるいは、スクリーンから迫りくる竜巻の脅威に慄き、ぼく自身が小刻みに震えていたのかもしれません。89分と短い尺の中でたっぷりと緊張感を味わった次第です。

いわゆる日本人にとっての地震が、米国人にとっての竜巻に相当するのでしょうか、馴染みのない災害だけに、その破天荒なディザスターっぷりに「すごい」「こわい」「まじか」と圧倒されっぱなし。その描写のアイデアとクオリティに、文字通り劇場内で嵐の中に飲み込まれました。

割に無名の俳優さん達を使っていたのもリアリティが増して良かったです。お父さんはなんちゃってヒュー・ジャックマン、お天気お姉さんはなんちゃってサンドラ・ブロックみたいでした。あの、ジャッカスみたいなでぶのばかコンビもパンチが効いててグッドでしたね。ポイントを押さえた丁度良いタイミングでうまく場をさらっていきました。

何よりこの映画のワンアイデアであるPOV方式が非常に効果的に機能していたと思います。ぜんぜん邪魔な感じでもなく、不自然さもない。いわゆる神の視点のシーンの場合、それを忘れるくらい決定的にド迫力な見せ場になっているので混乱もないですし。

実在する職業なのかどうかわかりませんが、竜巻ハンターっていう設定も面白いですよね。リーダー格のピートが念願かなって「目」の中に入り静寂に包まれるシーンは神々しさすら感じさせその前後の荒々しさと相まって素晴らしいカットでした。

ぼくは、ジャンルとしてのパニックものやディザスターものはあまり好みではないのですが、今作に関してはその臨場感あふれる映像はもとより、脚本が良く練られいて伏線の張り方や回収も巧みですし、俳優陣も真摯で抑制を効かせた演技で非常に好感を持ちました。

最後は、家族の絆、そして強いアメリカみたいなところに落とし込んでいるのが、やっぱり感はありましたが、あのでぶコンビの愛嬌もあって許容範囲です。

なんとなく昨年鑑賞した「アフターショック」を思い出し、これがイーライ・ロス製作あるいは監督だったらいくらでもグログロになるよなあ…なんて思ったりしましたが、今作はそこら辺の描写(この映画に登場する人物は皆さん良い人ばかり)よりは竜巻の持つ脅威の力そのものがもたらす自然災害の様子をこれでもかと言うくらい描いているので、これはこれで大変に恐怖しきりで、このジャンルの映画とPOV方式での撮影アイデアにおいてエポックメイキングな一本になったのではないでしょうか。

奇しくも、防災週間。災害時のスマホ撮影にはくれぐれも注意しようと思ったのでした。あと、調子こいて可愛い女の子に「良かったら、手伝うよ!」とか言わない。