2015年7月31日金曜日

バケモノの子


2015年/日本/119分
監督・原作・脚本 細田守
作画監督 山下高明、西田達三
美術監督 大森崇、高松洋平、西川洋一
音楽 高木正勝
主題歌 Mr.Children
出演 役所広司、宮崎あおい、染谷将太、広瀬すず、山路和弘、宮野真守、山口勝平、黒木華、大野百花、長塚圭史、麻生久美子、津川雅彦、リリー・フランキー、大泉洋

九太が卵かけごはんをげーげー言いながら食べてましたけれど、いくら新鮮な生卵とは言え素のままではきついんじゃないかと。そこは、醤油なり麺つゆなり味の素なりをかけるとか、せめて別皿で生卵をよく溶いてからごはんにかけるとかいろいろあるじゃないですか。卵かけごはんの世界も広く奥深いものがあるわけで、細田守監督の卵かけごはんに対する愛情が微塵も感じられなかったのが残念でした。

もう一つ、九太(この時点では蓮)が追われて逃げ込んだ路地裏で食べるもの(チコにちょこっと分けてあげたやつです)、あれ何なのでしょうね。パンの類かとも思いましたが、白くて四角く厚みもあったし、割にもっちりした触感のようでした。白はんぺんかな。

それはさておき、映画の感想ですが…ごめんなさい!ぜんぜんダメでした!
ぼくはアニメーションは門外漢とは言え、幼い頃はテレビアニメやディズニー映画に慣れ親しんでいましたし、大人になってからもジブリ作品程度はほとんど鑑賞していたりします。そこで、ぼくが特に劇場長編アニメに期するものは、文字通りアニメーションならではの映像なのです。ちょっと引き合いに出すものが偏っていて申し訳ありませんが、例えば『もののけ姫』のディダラボッチのシークエンスや『崖の上のポニョ』の“ワルキューレ”のシーンが大好きだったりするのです。

今作に関しては、画が止まって(あるいは想像できる範疇の動きしかしない)、長々と台詞をしゃべってる場面があまりにも多く、そこに描かれている画と声優さんがあててる台詞がてんでばらばら、もしくは台詞だけが妙に浮いているように感じたのですね。だからぜんぜん(ぼくの感じる)アニメーションの面白さが伝わってこない。その意味ではクライマックス、一郎彦が鯨になって渋谷の街を泳ぎ破壊する一連のシーンは「お、すごい!」と単純に楽しみました(なぜ、鯨のイメージを取り込めたんだ、とか青い光がキラキラきれいで、ぜんぜん闇とか悪意が伝わってこないとかの突っ込みは覚えましたが)。

お話の方も良く分からなかったです。結局何が言いたいんじゃい!と。まあ、いろいろ言いたいんでしょうけれど、これはぼくの感受性(及びこれまでの人生譚)に問題がある可能性が非常に高いので、深くは掘り下げないでおきます。そもそも、Mr.Childrenの主題歌が流れ始めた頃にはそそくさと席を立ち出口に向かっていた次第なので、今作に臨む姿勢にも充分謂れがある身なので沈黙は金ですね。

最後にひとつ。熊徹を演じる役所広司、そのキャラクターにあった台詞回しで「粗にして野だが卑ではない」熊徹の魅力をいかんなく発揮しており、さすがに大変にお上手でしたが、ああも「くそっ!」と何度も悪態をつかれるとどうしても『渇き。』を思い出してしまい、いささか鼻白んだのです。つよキャラのイメージ定着力はこわいですね。

『渇き。』の役所広司。こちらは、バケモノの子ではなく娘がバケモノだったと言うお話ですね。