2016年4月26日火曜日

マジカル・ガール


Magical Girl/2014年/スペイン/127分
監督 カルロス・ベルムト
脚本 カルロス・ベルムト
撮影 サンティアゴ・ラカハ
出演 バルバラ・レニー、ルシア・ポシャン、ホセ・サクリスタン、ルイス・ベルメホ、イスラエル・エレハルデ、エリザベト・ヘラベルト

ムービーウォッチメンで取り上げられた際には、まだこちらの地域で上映されてなかった為、ひと月程遅れての鑑賞となりました。前情報はタイトルのみと言う状態で鑑賞したので、(観た人は分かると思いますが)そりゃあ、ビックリしましたよ!オープニングからいきなりなんだこれ、なんだこれとスクリーンに引き込まれていくうちに物語は予測もつかない展開を見せ、終わってみれば、す…すごい映画じゃんと震えながら劇場を後にしたのでした。とは言え後味の良い映画とはお世辞にも言い難い物語なので、その意味でも震えが止まらない一本ではあります。

映画は三章立てで描かれているのですが、構成が非常に巧いんですよね。尚且つ観客の想像に委ねる語り口が効いていて、作品それ自体にふくらみを感じます。また、ノワール、ミステリ、難病ものなどいくつものジャンルがひとつに詰め込まれ、散りばめられていて、それでいて散漫にならないと言うかすっぽり収まっているんですよね。そして、映画全体を通じて漂う不穏感と筆舌に尽くし難い救いようのなさ。

ぼくは、元教師のダミアンが活躍(?)する第三幕目のくだりが好きでした。ハリウッドならロバート・デ・ニーロが似合いそうな役どころをホセ・サクリスタンと言うスペインの俳優さんが演じています。この人が映画のオープニングとエンディングを締める格好となるのですが、ファム・ファタールに翻弄される(そして、そのような人生を送ったであろうと想像させる)初老の男をミニマルな演技で、色気すら感じさせる絶妙な按配で演じています。

このブログではあえて映画の内容や登場人物についてあんまり触れておりませんが、とにかくなるべくなら前情報なしに、なんなら「へー、魔法少女のお話か」くらいの感じで観に行って欲しいですね。間違いなく度肝を抜かれるでしょう。もちろん、好き嫌いの分かれるところではありましょうが。撮影も良かったですよ。遠景のショットやじっとカメラを据えるシーン、映像の不穏な、しかし美しい質感。こちらも併せて注目してほしいところです。

ぼくがこの作品以外に観た記憶があるスペイン映画はペドロ・アルモドバル監督の『私が、生きる肌』だけなので、スペイン映画(あるいはスペイン人、スペインそのもの)はものすごくウィアード(weird)でぶっ飛んでるって印象が焼きついてしまったのですが、その認識でよろしいのでしょうか、スペインの皆さん。Hola!

“マジカル・ガール”に翻弄され道を踏み外していく二人のおっさん。

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