2016年5月18日水曜日

ちはやふる 下の句


2016年/日本/103分
監督 小泉徳宏
原作 末次由紀
脚本 小泉徳宏
撮影 柳田裕男
音楽 横山克
主題歌 Perfume
出演 広瀬すず、野村周平、真剣佑、上白石萌音、矢本悠馬、森永悠希、松岡茉優、松田美由紀、國村隼

『ちはやふる 上の句』ぼくの感想はコチラを思いもよらず、と言った感で楽しんだ為、今作も「また、あいつらに会える!」と心待ちにしており、公開間もなく劇場に駆けつけ鑑賞しました。そして、今週のムービーウォッチメンで取り上げられると言うことで、念押しとばかりに二度目の鑑賞と相成りました。初見は再び“あいつら”に会えた喜びやら、懐かしみやらで冒頭からうるうるとし、真剣佑演じる新の“気づき”のシークエンスで涙腺決壊、上映後、館内の明かりが灯るとハンカチで目頭を押さえたおっさんが一人、と言った構図でしたが、二度目の鑑賞はあらかじめハンカチも手元に用意し、余裕を持ってスクリーンに対峙することが出来ましたよ。泣きましたけど。

なるほど“上の句”はそれ一本でひとつの作品足り得るカタルシスがあり、単品としての完成度も十二分であったのに対し、今作はあくまで二部作の後編、“上の句”あっての“下の句”とはなっております。テーマとしても競技かるたにおいての勝敗に重きを置くよりは、「自分にとってのかるたとは何か」と言うところに焦点を当てていますので、勝った負けたのスポ根ものとしての落しは弱いでしょう。しかし、これ“上の句”からうまいこと引き継いで、よりひとつの大きなふくらみを持たせた青春ものの金字塔として実に見事に結実しているとぼくは思います。

上述のようにテーマとして自分にとってのかるたとは何か、すなわち自分とは何かと言う若者にとって普遍的なアイデンティティの問題に着眼し、独りじゃないんだ、仲間がいるんだ、といわゆる絆、つながりと言うものを殊更強調しています。つまり、青春まっしぐらなんですね。衒いがない、うすら寒くもない、どこに出しても恥ずかしくない立派な王道青春ストーリーです。そこにおじさんは好感を持ち、涙したんでしょうね。ああ、ぼくにもこんな時があったなあ…と、間違いなくぼくの人生でそんなことは一瞬たりともなかったのですが、そんな錯覚すら起させると言う。

そして、この“下の句”の出来を下支えしたのは間違いなく、かるたクイーンである若宮詩暢を演じた松岡茉優ですね。傑出した演技で、どこからどう見ても「かるたクイーン」然としていました。ゆるキャラに目を奪われたり、ださいジャージ姿のギャップも効いてその異彩ぶりを際立たせていました。ぼく、実は初めてこの女優さんを拝見したのですが関西の方なのですかね。京都弁も巧みでしたし、ほんとミリ単位で顔や声の表情をコントロールしていましたよ。千早との最後の会話「また、かるたしようね!」「…つ…」「え?」「…いつや?」のくだりは良かったですねえ。凄い女優さんです。

もう一人、この“下の句”で物語を引っ張るのが新ですね。真剣佑くん。綺麗な顔立ちで、内に秘めるパッションを抑制しつつミニマムな所作と台詞で演じており、大変好感を持ちました。終盤、千早vs詩暢の個人戦を観戦しながらやり取りされる國村隼演じる原田先生との一連のシークエンス、真剣佑くんも号泣ですが、ぼくも号泣ですよ。目玉がもげるかと思いました。そしてラスト、太一と対峙するシーン、最高でしたね!あれをちょっと物真似したいので誰か見て頂けるとありがたいのですが。

今回は広瀬すずさんについて言及していませんが、もちろん彼女の演じる千早あってこその“ちはやふる”ですよ。もう一点、思ったのですがこの監督、アクションシーンを撮るのがすごく上手いんじゃないかな、と。ちょっと競技かるたのと言う括弧付きなので断言はできませんが、カット割りやら編集の繋ぎ方、スローモーションの使い所などが良い按配で、ひとつこの監督でアクション映画を一本観てみたいなとも思ったりしております。とにもかくにも、続編の制作も決定!と言うことで、喜ばしい限りですね。また、あいつらに会える!と今から楽しみにしております。

「安西先生…!かるたがしたいです…」(※そんなシーンはありません)

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