2016年1月1日金曜日

クリード チャンプを継ぐ男


Creed/2015年/アメリカ/133分
監督 ライアン・クーグラー
キャラクター創造 シルベスター・スタローン
原案 ライアン・クーグラー
脚本 ライアン・クーグラー、アーロン・コビントン
撮影 マリス・アルベルチ
音楽 ルドウィル・ゴランソン
出演 マイケル・B・ジョーダン、シルベスター・スタローン、テッサ・トンプソン、フィリシア・ラシャド、アンソニー・ベリュー、グレアム・マクタビッシュ

監督のライアン・クーグラーと主演のマイケル・B・ジョーダン、『フルートベール駅で』のコンビだったんですね。大変に佳作でしたし、マイケル・B・ジョーダンの好演が光っていました。今作でも主演であるアドニス・ジョンソン(=クリード)役で、なかなか繊細かつ力強くのし上がっていく様を嫌味なく演じていてぼくとしては評価が上がりましたね。好きな俳優さんの一人になりました。

友人・知人の映画ファンから「イイ!」「泣ける!」との評判を聞き、大晦日の劇場に滑り込みで足を運んでの鑑賞でしたが、確かに涙腺を刺激してやまない一本でした。館内、大晦日とは言えそこそこの客入りでして、結構な割合でぼくと同年代と思しき男性が涙に咽んで嗚咽を漏らしていましたね。もちろん、ぼくもハンカチ片手に目玉が取れそうなくらい涙しておりました。

ウィリーしながら並走するモトクロスバイクやトライクを引き連れ、ロッキーのアパートメントまで猛ダッシュしてそこで思い切り雄叫びを上げるシーン、試合前に届いた品物を開けると養母から「あなたは、あなたの伝説を作って」と綴られた手紙とともに“CREED”“JOHNSON”と裏表に刺繍された星条旗柄のトランクスが入っているシークエンスなど、号泣ポイントは枚挙にいとまがありません。漫画の擬音文字で、泣く描写の時に「ぶわっ」ってのがあると思うんですけれど、まさにそんな感じで涙腺をやられます。この映画を観た皆さんでそれぞれの号泣ポイントを教えあって「ああ、そこそこ!」とか言いながら一杯やりたいですね。

そして何より、老ロッキーを演じるシルベスター・スタローンが大変に良い味を醸し出しております。アカデミー賞獲れるんじゃないかなってくらいの枯れた渋い演技で、もちろん実際のシルベスター・スタローンももう老齢にさしかかっているのですが、『エクスペンダブルズ』シリーズとは違い、スクリーンの中で一時代を築いたロッキーとしての彼と、ハリウッドで一時代を築いた俳優スタローンとしての彼が絶妙にマッチングして、恐らくは今作でなかったなら為し得なかったであろういぶし銀の演技でもって魅せてくれます。背中で語る男ってヤツですね。

ぼくは、『ロッキー』シリーズは恐らく『ロッキー4/炎の友情』をリアルタイムで劇場で鑑賞しその前作まではテレビかレンタルビデオで観たんだと思います。5作目以降は観ていないですね。ただ、もちろん4作目まで観ていればオマージュがふんだんに盛り込まれているのが分かりますし、監督のライアン・クーグラーのロッキーファンっぷりが伺えます。お話のほうもいわゆるロッキー的な王道パターンで初見の方でもこれはこれですっと入っていけるんじゃないでしょうか。シリーズ化するかどうかは微妙なところですが。

ちょっと残念だったのがラスボスである“プリティ”・リッキー・コンランが小粒だったというかPFP1位にしては体も締まってないし、あまりにも素行が悪く(それもしょぼい感じで)、あんまり難攻不落の
チャンピオンって感じに描写されていなかったように感じたことですね。彼との試合、ゴングが鳴ってからその結末までのシークエンスもぼくとしてはイマイチ…。ロッキーVSアポロ戦の再現とはならなかったようです。試合シーンはむしろ長回しのカットで撮影した初戦のほうが熱かったです。

昔から、ボクシングと言うスポーツが大好きなのですが現実のファイトもそれをモチーフにした映画などの作品にしても理屈を超えた部分で胸を揺さぶられるものがあります。そう言う意味ではずいぶんと贔屓目に今作を鑑賞した感想となっていると思いますが、ともあれ日々凡庸に暮らしながらも、どこか深く心のうちに熱いものを秘めた中年男性の諸君、今年の泣き初めに今作を鑑賞してはいかがでしょうか。

在りし日のロッキー・バルボアとお父さんアポロ・クリード

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