2016年8月6日土曜日

ファインディング・ドリー


Finding Dory/2016年/アメリカ/97分
監督 アンドリュー・スタントン
共同監督 アンガス・マクレーン
製作総指揮 ジョン・ラセター
原案 アンドリュー・スタントン
脚本 アンドリュー・スタントン、ビクトリア・ストラウス
音楽 トーマス・ニューマン
エンドソング シーア
日本版エンドソング 八代亜紀
声の出演(日本語吹き替え版) 室井茂、木梨憲武、上川隆也、中村アン、菊池慶、小山力也、田中雅美、さかなクン、八代亜紀、青山らら

実は前作の『ファインデング・ニモ』は未見なんです。あれだけ話題になったのにもかかわらず機会を逃し続けて、なんと早13年なんですね。DVDで予習する暇もなく劇場へGO、2D日本語吹き替え版で鑑賞してまいりましたが、これが存外楽しめました。面白さと感動が相まって、ここのところ荒みがちだった心がドリーたちの泳ぐ太平洋の海水で綺麗に洗い流されましたよ。

ぼくも元来、物忘れの激しい方でして、そこに加えて近頃は加齢による記憶力の劣化が著しく、もちろん劇中で描写されるドリーの短期記憶障害の症状とは意を異にしますが、決して他人(魚)事とは思えず、ググッと感情移入してしまいました。他にも弱視のジンベエザメや七本足の蛸など所謂ハンディキャップを抱えた海洋生物が登場し、障害を持つ人々をメタフィジカルに描いているわけですが、現実の問題はどうあれ、大人も子供も楽しめる非常に娯楽性の高いアニメーションとして落とし込んであって、物事をポジティブに捉えようと言う前向きさにぼくは好感を持ちました。

映像のクオリティの高さはもちろん、海洋生物たちの泳ぐ横の動きに対する、今回の舞台である水族館・海洋生物研究所を巧く利用したぴょんぴょんと飛び跳ねたりする(あるいは鳥のベッキーに運ばれ宙を舞う)縦の動きがスクリーンに奥行きを与えて、アクションシーンが非常に豊かで楽しいものでした。物語も終盤、蛸のハンクがトラックを運転し果てはトラックごと海に突っ込むと言う突っ込みどころ満載のシーンがあるのですが、このぶっ飛び具合もぼくとしてはオーケーでしたし、あそこでルイ・アームストロングの『What a Wonderful World』が流れるに至っては、うん、まあ細かいことは置いといて最高じゃん!となった次第です。

この蛸のハンクが今作のキーパーソン…パーソンではないですが、とにかく最高なんですよね。保護色を使って何にでも変身できるし、海の中も陸の上もなんのその。ベビーカーの運転から前述のようにトラックの運転までお手の物でチートっぷりがハンパない。でも、そんな彼も辛い過去を背負っていて、根は優しく淋しがりな蛸さんなのです。ちらっと『ズートピア』のニックを彷彿とさせますね。彼の面目躍如の活躍っぷりでストーリーがグングンとテンポ良く動いていく感じですね。ドリーとのパートナーシップも抜群に良く、またまた、ディズニー・ピクサーに名コンビ誕生と言ったところでしょうか。

話は逸れますが、本編に先駆けて流れる同時上映の『ひな鳥の冒険』が素晴らしいんですよ。思わずこちらのエンドロールで拍手しそうになりました。実写とアニメーションのギリギリの線を描く映像のクオリティと幼い命が恐怖心に打ち克って世界の美しさに目覚めるテーマ性を凝縮した至高の6分間でして、こちらも含めて本編も親目線で観れちゃってそれがギュンギュンくるんですよね。ドリーの両親の娘を思う気持ちとハンディキャップを持った者に対する接し方、すごい沁みます。もちろん、ひな鳥やドリーなどの当事者目線でも充分にノレますので、その辺りの懐の深さはさすがと言った感です。

両親が貝殻を並べて家までの道標を作り、いつ帰るともしれぬドリーを待つ。そして、感動の再会なんてベタですけれども、そんなベタベタな場面でやっぱりホロリとしてしまう自分に少し安堵しました。そして、例えばドリーのような記憶障害って自分や自分の両親の認知症、あるいは介護問題みたいな話にもつながってくると思いますし、ハンディキャップを持った人々との対し方、あるいはもし自分がハンディキャップを負ったとして、どう世界と向き合っていくかみたいな話もあると思うんでよね。エンドロールで流れる『Unforgettable』が胸の底にしんと深いものを残します。ちなみに、色々と意見のある八代亜紀さんはぼく的にはオーケーでしたよ。八代亜紀バージョンの『アンフォゲッタブル』もグッドでした。

同時上映の短編『ひな鳥の冒険』(原題:Piper)。出色のクオリティ。ひな鳥ちゃんがきゃわわなんです。

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