2016年8月19日金曜日

シン・ゴジラ



2016年/日本/119分
総監督 庵野秀明
監督 樋口真嗣
脚本 庵野秀明
特技監督 樋口真嗣
撮影 山田康介
音楽 鷺巣詩郎、伊福部昭
出演 長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ、高良健吾、大杉漣、柄本明、余貴美子、市川実日子、國村隼、平泉成、松尾諭、渡辺哲、中村育二、矢島健一、津田寛治、塚本晋也、野村萬斎

Twitterのタイムラインも喧しく、ネタバレされても敵わんと公開早々にIMAXにエグゼクティブシートを陣取り鑑賞してまいりました。客入りもほぼ満員、熱気すら感じさせる劇場内でしたが、実はぼく、正直言ってそんなにノレなかったんですね。上映終了後、噂に聞いていた拍手があちらこちらで湧き起っていましたが、微妙な心持であったぼくは、うそーん!となってノレない自分にさらに気持ちが沈んでいくのでした。その後、Twitterをチェックしたり色々な方のレビューやブログを読んだりしましたが、皆一様に大絶賛。観客動員数もうなぎのぼりで興行収入もン十億円越え!と大げさに言えば社会現象にすらなっている様子。ぼくは「これがツマラナイと言うお前がツマラナイんじゃ!」「ふふふ…この良さが分からないとは、あんたバカァ」などの幻聴が頭の中を駆け巡り、鬱を患ってしまう程にまで落ち込んでしまいました。いや、面白かったんですよ。でも、なんか台詞は聴き取れないし、あ、あの人名前なんだっけ?とか、演出やカメラワークが何かのアニメの実写版みたいだし、ヤシオリ作戦に至ってはゴジラが歯医者で治療されてるみたいだし…とか様々なノイズが煩わしく頭に響いて、結果「そこまでのものかな」と言う感想に至った訳です。

そうして、鬱になり半ばひきこもり状態であったぼくは「これではいかん!」と、ちょうど北海道へ旅行に行っていたのですが(←ひきこもってない)、その最終日、ユナイテッドシネマ札幌で2回目の鑑賞へと立ち向かったのです。「サッポロでゴジラ」ってなんとなく響が良くないですか。それはともかく、2回目の鑑賞は初見の時のノイズがクリアされて、台詞も割に聴き取れ、演出や小ネタも含めてディテールも掴めましたし、随分と楽しめました。こちらも館内はほぼ満員の入りでしたが今回は上映終了後の拍手はありませんでしたね。初見の時はシリアスな場面にそれが挿入される為、「え?これ笑っていいの」と面喰ってるうちに話しが進んでいってしまってもやもやしたんですけれど、今回はちゃんと笑っちゃうところで笑えたのもポイントが大きかったです。嶋田久作は2回とも笑いましたけれど(あれ、笑って良いんですよね?)。

俳優陣が豪華で総勢328名とのことですが、オールスターキャストではないんですよね。むしろ普段脇で光る俳優さんとか、顔は良く拝見するんだけれど、名前が出てこない!って役者さん(それ以外の人も。原一男監督とか!)がたくさん出演していて、しかもそのキャスティングが激ハマリしてるって言うのが凄いですよね。そういう意味では全然煩くない。そして、長谷川博己と石原さとみですが、逆にこの2人以外にあの配役を演じ切れる人います?ってくらいベストなキャスティングだとぼくは思います。今作では舞台で大きなお芝居を演じるようなメソッドを持っている人が適材だし、過剰なまでに強いキャラクターでないと他に負けちゃいますし、ゴジラにも対せないですもんね。あと、ぼくが感嘆したのは國村隼の台詞回しの凄さ。これは初見の時から感じました。ボソボソ喋ってる感じなのにスッと台詞が頭に入ってくる。この人、どの映画でも基本的にメソッドは変えてないんだけれど、それぞれに馴染むんですよね。もちろん「仕事ですから」と彼は答えるでしょう。

ちなみに、少しエクスキューズしておきますと、ぼくはゴジラに関してはムービーウォッチメンで取り上げられた2014年のギャレス・エドワーズ監督『GODZILLA ゴジラ』(ぼくの感想はコチラ)、通称「ギャレゴジ」しか観ておりませんし、特撮怪獣映画にも特段の関心もありません。庵野秀明監督についても、もちろん存じあげてはいるものの『新世紀エヴァンゲリオン』を始めとしてその作品は観たことがありません。なので、そちら方面の切り口からは何も語ることができないわけです。ただ、今作に関して言えば、そういう人たちにこそ観に行って欲しいというオススメの語り口がありまして、確かに、3.11以降に作られた1本の邦画として、今後映画史に残るであろうエポックメイキングな作品になることは間違いないと思いますし、この映画は大傑作と太鼓判を押す方が多勢であろうことは理解できます。まだまだ、ネット上でも様々な評論や考察などが飛び交っておりますし、二次創作も活発なようです。語るに尽きない作品であることは確かですね。

さて、そんなわけでぼくも何とか2回目を鑑賞して少なからず今作を味わいだしたと言うところですが、やっぱりですね、別にそんな手放しで大傑作じゃん!と言うわけではありませんし、これは単なる好みの問題でしょう。でも、本当に作り手が心血を注いで面白いものを作ろうと思ったらこれだけのものが(予算などの制約がありながらも)作れるんだと言うのは誇らしい気もしますし、単純に娯楽作品として観ても遜色ない作品を仕上げてきた手腕は見事だと思います。あと、声に出して読みたい日本語がたくさん出てくるのも嬉しいですよね。しかも、汎用性が高い。「まずは、君が落ち着け」とか「骨太を頼むよ」、「え、今ここで決めるの?聴いてないよ」とかですね。挙げたらキリがありません。あ、書くの忘れてましたが2回とも唖然とスクリーンに釘付けになったシークエンスはもちろん、ゴジラが放射熱線で東京の街を焼き尽くす一連の場面です。絶望と恐怖が入り混じったシーンが悲愴的な音楽と共に眼前に拡がり、もう手の施しようのない災厄感がばんばんに出てて何とも言えない心持になりました。畏怖の念すら感じましたね。いずれにせよ、もし迷っている方がいらっしゃったらとりあえずは映画館で観ることをオススメしたい、リアルタイムでこの映画を体験してほしい、そんな作品ではあります。

カヨコ・アン・パタースン役を演じた石原さとみ。名言「ZARAはどこ?」を残しました。そして、「特殊なインクを使っているの。カピーは不可よ」は今年の流行語大賞です(ぼくの中の)。

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