2014年8月1日金曜日

マレフィセント


Maleficent/2014年/アメリカ/97分
監督 ロバート・ストロンバーグ
脚本 リンダ・ウールバートン
撮影 ディーン・セムラー
音楽 ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演 アンジェリーナ・ジョリー、エル・ファニング、サム・ライリー、シャルト・コプリー

『アナ雪』に続き、今回も男の出る幕はない!って感じでしたね。
そして、同様に「真実の愛」がテーマでしたが『アナ雪』ではそれは自己犠牲、今作では母性愛と言ったところでしょうか。
『眠れる森の美女』で邪悪な妖精として描かれたマレフィセントに主役の場を与え、コペルニクス的展開で現代的なカタルシスを観客にもたらすファンタジーでもって一級の娯楽作品として仕上げた手腕にまずは拍手喝采。ぼくは、ぜんぜん『アナ雪』より愉しみました(むしろ、そちらの方は途中で居眠りしたり…)。
尺も程々、冗長さも無く抑揚たっぷりにテンポ良く進んでいく展開と、実写であってもすんなり飲み込んでいけるビジュアルの技術力は素晴らしいと思います。

キャスティングの絶妙さも功を奏して、アンジェリーナ・ジョリーのマレフィセントっぷりには感服です。ぼくは、左程好みの顔では無いのですが、それにしてもあの頬骨のライン。頬骨殿堂入りです。しかも、ツノが生えてます。違和感ないです(あるかな)。颯爽と飛びまわり、無垢に愛し、そして、悲痛に打ちひしがれて悪の魅力に取り憑かれるままに呪いを放ち、時にシニカルなユーモアでくすりとさせつつも、最後には真実の愛に目覚めて慈愛に満ちた威厳を放って包み込む。彼女の演技力はやっぱり確かなものだと感じました。

あの何の役にも立たない妖精トリオにキスが下手だと世の男性諸君なら撃沈間違いなしの罵りを受けた王子はさておき、と言う古来のディズニー作品のお約束をぶっ壊したシークエンスの後、マレフィセントが懺悔してオーロラのおでこに軽くキスをするくだり、すごく抑えた演出で、それがまた胸にしんしんと響いて、ぼくのドライアイも流石にもう一回来たら治療も終わりですね、と言うところまできました。

まあ、ぼくも男なのであまりにも登場する男性の扱いがひどい(救いはからすくんのディアバル、良い役者さんでした)と言う嫌いはあるものの、既にお姉さんを抜き去ってしまった感のあるエル・ファニングのアシンメトリーな眉毛のあがり具合も含めてファンタジックに美しいオーロラの造形も良く、非常に「現在」性の高いディズニーの、それもアニメではない実写版のフェアリー・テールとして大変に満足のいくものでした。

『アナ雪』『マレフィセント』ときて、果たしてディズニーが次はどういう一手を打ってくるのか。愉しみなところです。

それはさておき、シャールト・コプリーにもたまには好感な役をあげてください。