2015年1月31日土曜日

ビッグ・アイズ


Big Eyes/2014年/アメリカ/106分
監督 ティム・バートン
脚本 スコット・アレクサンダー、ラリー・カラゼウスキー
撮影 ブリュノ・デルボネル
音楽 ダニー・エルフマン
出演 エイミー・アダムス、クリストフ・ヴァルツ、ダニー・ヒューストン、ジョン・ポリト、クリステン・リッター、ジェイソン・シュワルツマン、テレンス・スタンプ、ジェームズ・サイトウ

作品自体は実話をベースにしていることもあり、いわゆる「ティム・バートンっぽさ」は鳴りを潜め気味で、逆にそこら辺のファンタジックな色合いがあまり得意でないぼくとしては好感を持って鑑賞できました。

オープニングから「へえ、アメリカにもそんな時代があったんだ」と当時の男尊女卑っぷりと、それでも、アメリカの持つ自浄作用と洗練化のパワーって(表面上は)そのスピード感も相まって凄いなあ、と現代を振り返りつつ、それに比べて日本は…と、今まさに話題(なのかな)の「モラル・ハラスメント」の問題を一つのポップ・アートを巡る夫婦間の泥仕合を通して描いた今作、大変にキャッチーで、尚且つ画作りも含めて色彩も豊か、それこそポップに仕上がっており、一人の女性アーティストの自立を描いた物語としても肩ひじ張らず娯楽できる作品だと思います。

それはさておき、何よりもぼくが美味しくいただいたのはもちろん、クリストフ・ヴァルツです。
『イングロリアス・バスターズ』のハンス・ランダ、『ジャンゴ 繋がれざる者』のドクター・キング・シュルツと、タランティーノと共に新たなキャラクターを生み出したその彼が、今作ではティム・バートンのもと、ウォルター・キーンと言うとんでもないモンスターを文字通りその怪演で見せつけてくれました。あるいはオーバー・アクティングだとの見方もあるやもしれませんが、この『ビッグ・アイズ』におけるバートン節はこのウォルター・キーンの演出に凝縮されているのではないでしょうか。

ジョニー・デップにもそろそろ飽きてきたな…クリストフ・ヴァルツ!いいオモチャ見つけた!と言わんばかり。そして、それに応えるべく当のクリストフ・ヴァルツもスクリーンの左から右へ、奥から手前へと存分にアクションし、饒舌な台詞回しで、エイミー・アダムス演じる主人公のマーガレットのみならず観客までも煙に巻き、とことん嫌な思いをさせる。真骨頂ですね。

圧巻は法廷での被告人、弁護士の一人二役シーン。抱腹絶倒でした。このウォルター・キーン氏は実在の人物ですから、まあ映画での彼の立ち振る舞いが話半分だとしても、それにしたって一体全体何をどうしたらこんな人物ができあがってしまうのか。サイド・ストーリーとして『実録!ウォルター・キーンが出来上がるまで』なんて作品があったら非常に興味を惹かれます。むしろ、そちらのほうが面白いかもしれない。

ティム・バートン監督、せっかくですからクリストフ・ヴァルツとまた組んでまた一本作ってほしいですね。ある意味、癖のある監督と組ませると非常に共鳴してその魅力が存分に発揮される懐の深い素晴らしい俳優さんだと思います。

あと、久しぶりにスクリーンでゾッド将軍の御姿が拝めたのが嬉しかったですね。反射神経良かった。

名優、テレンス・スタンプ。さすが、ゾッド将軍、フォークで襲い掛かられても一捻りです。