2016年9月23日金曜日

HiGH&LOW THE MOVIE


2016年/日本/130分
監督 久保茂昭
脚本 渡辺啓、平沼紀久、TEAM HI-AX
企画プロデュース EXILE HIRO
撮影 鯵坂輝国
音楽 中野雄太
音楽プロデューサー 佐藤達郎
出演 AKIRA、青柳翔、高谷裕之、岡見勇信、井浦新、TAKAHIRO、登坂広臣、岩田剛典、鈴木伸之、町田啓太、山下健二郎、佐藤寛太、佐藤大樹、岩谷翔吾、窪田正孝、林遣都、早乙女太一、天野浩成、中村達也、西岡徳馬、松澤一之、橘ケンチ、豊原功輔、YOU、小泉今日子、白竜

巷でいかほど話題なのかどうかは定かではありませんが、ぼくのTwitterのタイムライン上では今作を鑑賞して、ずぶりとハマった熱狂的なファンが、公開からしばらく経った今なお異様なまでの盛り上がりを見せており、友人・知人の中にも口を開けばHiGH&LOW話という地獄に陥った猛者が幾人かおりまして、ぼくとしてはさしたる、と言うか全くと言っていいほど興味のないジャンルの映画ではありましたが、ムービーウォッチメンで取り上げられると言うこともあり、重い腰を上げて劇場に足を運びました。

気乗りしないままスクリーンに対峙し、どうなるものやらと思いながら鑑賞したものの、予想通り、途中で退席しようかと何度か考え、時に襲われる睡魔と闘いながらのなかなかに辛みのある鑑賞体験となりました。もちろん、ドラマは未見、EXILEや三代目JSoulBrothersその他所謂LDHの面々もほぼ誰の顔と名前も一致しない、ましてや興味もなしと言ったぼくのステータスではありますが、押さえ所には井浦新や窪田正孝、豊原功輔など芸達者な俳優を配し、一応は豪華キャストとなっていますし、冒頭からその世界観を映像とナレーションで懇切丁寧に説明してくれるので(MUGENとは、雨宮兄弟とは、SWORDとは…etc.)、まったく置いてけぼりと言うわけではなかったです。

まあ、何がダメだったのかと問われると一言では言い難いですが、結局のところ「うん、その話、ぼくはどうでもいい」と言うことでしょうか。眼前をイケメン男子たちが見得を切りながらバイクに乗ったり、喧嘩をしたり、アツく叫んだりするのですけれど、そりゃあノレない人はノレんわなあ、と言う身も蓋もない感想に落ち着いてしまう今作ではあると思います。ただ、逆に言えばその世界観から登場人物、各エピソードの積み重ねがハマる人には十分にハマるだけの要素があることも理解できます。設定はガバガバなところが多いですが、その分ディティールはかなり微細に描きこまれている(ような気がする)ので。

全体としては常にバックグラウンドで音楽が流れていて、ひとつの大きなPVのような作りになっていますね。また、先に述べた見得の切り方もクラシカルで歌舞伎を想起もさせます。伝統芸能ってヤンキー文化まで脈々と続いてるんだなあ、と感心しちゃったりもしました。脚本も大筋は古典的なものですし、そういう意味ではある一定の層に受け入れられるのはすごく分かりますね。それと、動ける演者さんをたくさん使っているだけあってアクションシーンは相当に見応えがあります。SWORD連合総力戦、100人VS500人のシーンは圧巻でした。スクリーンに映らない部分も含めて、丁寧に演出してありますし、相当なリハを重ねたと思います。カメラワークも冴えていて、長回しでクローズショットからロングショットまでメリハリをつけた画作りになっていて、これは昨今の邦画の中でも出色の出来映えと言えるのではないでしょうか。

あと、物語を補填するために回想シーンが多用されるのですが、これと各登場人物の挿入的なエピソードを割に短いカットで重ねていくため、作品全体にブツ切り感があるのと、やっぱり実際の上映時間以上に体感時間が長く感じられるのですよね。ただ、終盤のVS琥珀さんシークエンスでの回想シーン内でさらに回想シーンと言う大技には「すわ、インセプションか!」と驚きと笑いを禁じ得ませんでした。しかも、なかなか決着がつかないうえに、決着がついたかと思うと、これにて一件落着みたいになっちゃって、肩すかしを喰らっちゃうんですよね。何にも解決していないように思うのですけれど。

そうは言ってもですね、やはり今作の放つ熱量というかそのハイカロリー具合は、ノレなかったぼくにもしっかりと伝わってきまして、その点は決して看過できるものではなく、突っ込みどころに浅く突っ込んで笑って終わり、では済まされないエネルギーとポテンシャルを持つ作品だと思いますし、それに応える受け手のエンスージアズムも羨ましさすら感じるほどです。ぼくの友人で今作にハマりすぎて、方々で「ハイロー話」を打つ、もはや「ハイロー漫談家」と化しているA君と言う好事家がいるのですが、彼なんかと話したり、話しを聴いたりしていると、その面白さがより深まってくるあたり、非常に懐の深い作品世界だなと思ったりもするわけです。と言うわけで、雨宮兄弟をフィーチャーする次作、『HiGH&LOW THE RED RAIN』もちょこっとだけ楽しみにしております。斎藤工のお兄ちゃんぶりにも期待したいですね。

お気に入りは、林遣都率いる達磨一家。「SWORDの祭りは達磨通せや」のキラーフレーズは痺れます。

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