2015年10月10日土曜日

心が叫びたがってるんだ。


2015年/日本/119分
監督 長井龍雪
脚本 岡田磨里
キャラクターデザイン/総作画監督 田中将賀
演出 吉岡忍
美術監督 中村隆
撮影監督/CG監督 森山博幸
音楽 ミト、横山克
主題歌 乃木坂46
声の出演 水瀬いのり、内山昂輝、雨宮天、細谷佳正、藤原啓治、吉田羊、村田太志、高橋李依、石上静香、犬山鎬則、古川慎、津田英三、宮沢きよこ、野島裕史、河西健吾

何度かこのブログに書いているのですが、ぼくが、アニメーションに期するところは宮崎駿監督『もののけ姫』のでいだらぼっちのシークエンスだったり、幼少の頃のフェイバリットだった『トムとジェーリー』のトムの足にアイロンが落っこちてありえないくらい目玉と舌が飛び出て顎が床に着かんばかりに外れるシーンだったりするので、今作のようにいわゆる等身大の人間模様を描いた作品はそもそも範疇外なのですが、今週のムービーウォッチメンで取り扱われるのでやむなく、と言ったテンションで鑑賞してまいりました。

“『あの花』スタッフが贈る”と言う帯文句ながらも、そもそも観ていないのでそれが何を意味するのかもわかりませんし、青春群像劇なんだなぐらいの前情報でしたが、なるほど青春群像劇でした。
しかし、アニメに限らず青春を描いたものを観たときに生まれる良質な感情、羨望を含めた、なんちゅうかこう胸が熱くなるようなものは一切感じず、ただただこそばゆいだけで、かてて加えてぼくはミュージカルが大変苦手なため、はよ終われ!と割に苦痛な119分の上映時間でした。

そもそも、主人公の成瀬順のメンヘラっぷりに辟易する事この上なし。父親はもちろん最低ですが、母親もそこそこクズなだけに、変なトラウマを背負い込んじゃって可愛そうではあるのですが、喋ろうとするたび「ああっ!」とか「くうっ!」とか大げさに体をよじらせトイレに駆け込み、あれ、その度にうんこしてるんですかね、お腹もさておき、お尻が痛くて大変だな、とか思ったり、終盤のミュージカル本番ぶっちぎりから坂上くんへのぶち切れ暴言吐きまくりで、おまけに言うに事欠いて「腋がクサイ」とか、お前、坂上くんがトラウマ抱えちゃうだろ!とか本当にですね、巻き込みすぎですよ周りの人を。挙句の果てに田崎くん、なんで告白してんの?って目が点になっちゃいました。

恋愛話を取って付けたように絡めたのがまずかったんですかね。それぞれの想いがすっごい浅くて、皆が皆、ダメ男、ダメ女として描かれる結果になっちゃているような気がします。まあ、高校生の惚れた腫れたってその程度のものって言われればそれまでですけれど。主人公のトラウマ回復、成長の物語としてしっかりと描き切り、恋愛を絡めたいならずばり王道のヒロイン、ヒーローの恋の成就って話にしたほうが良かったと思うのです、個人的には。

玉子と王子って発想は面白かったし、「言葉にできない胸の内、でもやっぱり言葉にしないと分からないんだ」みたいなテーマって確かにあって興味深くはあるんだけれど、脚本の煮詰め方とキャラクターの掘り下げが、ぼくには物足りなかった、と言うのが正直な感想ですが、単にぼくが最早取り返しのつかないほどおっさんになってしまっているため、お前には分からないんだよ、と言うことかもしれません。突如挟み込まれる、モブのキスシーンが一番エキサイトしましたしね。

作画のことは良く解りませんが風景や背景は丁寧に描きこまれていて綺麗でした。あと、ぼくには珍しくクラムボンのミトによる音楽が大変に美しく、良かったです。もしかすると、大変に良作であり評価もそれなりの作品なのかもしれませんが、そこは申し訳ない、おじさんは気持ちを切り替えて、口直しにTSUTAYAで『カンフー・パンダ』をレンタルして、ビールを飲みながら鑑賞することにします。