2015年10月21日水曜日

バクマン。


2015年/日本/120分
監督 大根仁
原作 大場つぐみ、小畑健
脚本 大根仁
撮影 宮本亘
音楽 サカナクション
主題歌 サカナクション
出演 佐藤健、神木隆之介、小松菜奈、桐谷健太、新井浩文、皆川猿時、宮藤官九郎、山田孝之、リリー・フランキー、染谷将太

ぼくも小学生の頃でしょうか、週刊少年ジャンプを熱心に読んでいた時期がありました。早売りの店を探し自転車を走らせて買い求め、一冊の雑誌を貪るように繰り返し読んだものです。当時は『ドラゴンボール』『コブラ』『キン肉マン』『シティハンター』、そしてもちろん『こち亀』などが連載し、誌面を賑わせていたような記憶です。ああ、夢中になって読んだなあと思いだし、そして拙いながらも落書き程度に絵を描いていた記憶を呼び覚まされなんだか懐かしい気持ちになりました。

今作、ぼくは原作未読なのですがなんとなく現代版『まんが道』っぽい話なのかなとあたりをつけていました。さておき、全編を流れる疾走感が大変に心地良く、ラストの小気味よい助走からジャンプ!と言った具合に絶好のタイミングでサカナクションの主題歌『新宝島』が流れ、このアイデアは抜群に秀逸と言わざるを得ないエンドロールでにやにやが止まらず、鑑賞後感は爽快でした。このエンドロールだけでもこの映画をお金を払って鑑賞する価値アリですね。

大根監督の真骨頂と言うべきか演出が非常に行き届いており、俳優陣の演技力、芸達者ぶりも相まってカリカチュアライズされた劇中登場人物にもうまく馴染めました。空々しくないと言うか熱量が伝わってきましたね。唯一、力量不足を感じたのがヒロイン役の小松菜奈ですが可愛かったのでオーケーです。

『渇き。』とは打って変わってぼくの評価はうなぎのぼりです。
プロジェクションマッピングやCGを用いた漫画製作のシークエンスもいささか間延びした感はありましたが意欲的だしおもしろかったと思います。ジャンプ編集部もロケーションかと思ったらセットなんですね。実際の現場は存じあげないですが再現度高いっ!と思わせるリアリティがあります。主役の二人を含めて漫画家さんの仕事場の舞台美術の密度とかも凄いですし、大根監督っぽい仕上がりの作品になっていて丁寧な仕事ぶりを感じます。

ただ、若干気になったのが脚本の部分ですかね。原作は単行本20巻とのことですが、それを120分の尺に詰め込むためにはもちろん様々な取捨選択とシェイプアップが必要だと思います。ぼくが引っ掛かったのはヒロインである亜豆美保と真城最高との恋模様。そして、真城最高が病に倒れながらも原稿掲載に向けて獅子奮迅するシークエンス。

恋模様については、あそこで亜豆が「先に行くから」って言っちゃったら最高のモチベーションはどうなるの?って思っちゃいましたし、徹底的に純粋なプラトニッククラブの成就ってのがその向こうに見えないと話しが違ってくるんじゃないかな、と。もう一つは山田孝之演じる編集者の服部が「漫画家の側に立つ」って言ってましたけれど、あの行動が果たして漫画家の側に立つことなのか、と言う疑問。って言うか高校生なのに親御さん病院にいないし、そもそもアシスタントなしで週刊連載は無理だろう、ましてや週刊連載を抱えながら他の漫画家のヘルプに回るの可能なの?とかですね。

そんなこんなでお話のリアリティの部分と時間軸がぽんぽん飛んでいく(手塚賞準入選あっという間でした)荒っぽさは感じた次第ですが、全体としては、うん、おもしろかったし、青春映画としてはもちろんお仕事映画としても良くできた、なによりエンターテインメントとして楽しめる気持ちの良い作品に仕上がっていることは間違いなと思います。これが入り口で未読の方は原作を読んでみようと感じるのではないでしょうか。原作ファンの方の反応はいかがなものでしょう。ぼくは、とりあえず単行本全20巻をTSUTAYAでレンタルしてきます(すみません、買わなくて)。